「なぁ、お前その漫画見せろよ。お前、漫画家なんだろう?」

 稔が男のクラスメイトに声をかけられて顔を上げた。

「うん、そうだけど、何」

 耳まで赤くして、男の子を睨みつける稔。
 あわわ。ダメだってば。
 でも手はしっかり絵を差し出している。

「何って。うわ! 絵、超うまいじゃん!!」
「そりゃね……じゃない。ありがとう」

 稔が恥ずかしそうに照れ隠しのいじっぱりをやめたのを見て、私はホッとする。
 うんうん、そうだよ。
 そこは素直にするべきだよ、稔。

「お前、お礼言えたんだな!?」
「うるさいなぁ。何、絵ならこのノートにいっぱいあるけど、見る?」
「見る? オイ! こいつ絵みんなに見せてくれるってよー!」

 稔のノートを持って男の子は嬉しそうにクラスメイトに叫ぶ。稔はドヤ顔。