「だけど、その学校から転校して、通信制っていう制度のある高校に入って今は元気に働きながら素敵な旦那さんと一緒に奥さんをしてるわ」
「そんなにすんなりうまく行くんですか!?」
 
 私は思わず机に手をバンとやり立ち上がる。
「行くのよ。そうね。すんなりではないかもしれないわね。その子が努力して培(つちか)った結果よ。明日花さん」
「でも、私たち中学生だし」

 高校生ほど大人じゃないし。自由じゃないし。
 まだまだ義務教育だし。
 
「そうね。でも逆にこう考えて、もう少しであなたたちは高校生になれるの。大人になれる、自由になれるのよ。そのために今、あなたたちはここで中学生をやっている。そう考えられないかしら?」

 保健室の先生の意見はごもっともだ。
 よく考えれば疾風も高校受験をしているし、稔だって高校のことを考えている素振りはあった。

私たちはもう子供じゃない。もうすぐ大人になる、その手前なのだ。
(さなぎ)が蝶々になるように。
 私たちは自力で、まだ出来立ての羽根で羽ばたいていく時期なのだ。


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