「そうなのね。大変ね……樋口さん、いえ、ひいや君は何も悪くないのにつらいわね」
「! そうなんです! 私もそう思うんですけど、そういう個性とか理解できないクラスメイトばかりです」
「明日花さん、説明してくれてありがとう。ひいや君は現状についてどう思ってるのかしら」

 保健室の先生はにっこり微笑んで立ち上がり、紅茶を淹れてくれた。
 いつもの懐かしい味に私は思わず嬉しくなる。
 今日だけは紅茶にふたつお砂糖を入れて、自分を甘やかすつもりだ。

「ボクは、明日花ちゃんがくるまで独りきりでした。ツラかったです」
「そうよね。よく頑張ったわね、ひいや君」
「……でも、ボクが変で変わっていて女々しいからってみんなが言うから。きっとボクの方が悪いんじゃってずっと思ってました」
「ありえないわ。いじめられる側は絶対悪くないの、いじめをする方が非常識で、人を思いやれないひどい人よ」
「先生」

 ひいやがポロポロと大粒の涙を流した。そうだよね。
 ずっと子供だけで抱え込んできた悩みだもん、大人の味方ができたら気が緩むし、安心するよね。
 私もひいやの震える背中をそっと撫でる。
 しばらくして、ひいやが落ち着きを取り戻した頃。
 ひいやはポソリポソリと語り出した。

「初めは見た目が女の子みたいって話だったんです。次第に持ち物や仕草も、細かく笑うようになってくるようになって」

 ひいやは迷うようにして、深呼吸して続ける。