「うん、そう思う! なんか動き遅いし、顔もうちらより異常に可愛くてムカつくし。これで勉強はできるとかウザイ。運動は出来ないくせに目障りなんだよっ」
「ほら、女子もそう言ってるぜー? 樋口。死ねよ。もう学校来んなよ。あ、保健室があるかー。この教室の小花明日花ってやつ。保健室に逃げたらしいし、仲良くやれば?  保健室で。ギャハハ」
「うるさい、ボクがどこに通うか勝手だし、その子だってどこに行くかはその子の勝手だよ!」

 意外と気の強いセリフを樋口は言った。どう見ても百四十代の小柄なその体で、怯みながらもいじめっ子に立ち向かっている。
 本当にすごいと思う。
 廊下を通る生徒たちはこの風景を気にも留めずに通り過ぎていく。つまりは、この光景は日常なのだ。

 そう思うと寒気がした。
 いじめは怖い。

 見ているだけで何も出来なくなる。
 教室には私と同じように見ているだけの子も当然いて。
 なるべくいじめっ子の大柄な男の子と目を合わせないようにしているのが、はたから見てもわかる。
 そう。

 見て見ぬ振りが一番平和なのだ。
 だけれど。