「先生、これ、ごめんだけど処理して」

 男の子はすぐ学ランを脱いで、先生に渡した。そりゃそうだ。私の吐しゃ物がついているのだから。

「私、すぐに教室に行きます! 私! 元気なんで!」
「ダメだよ。お前。吐いたばっかりでしょ。……えっと、そう言えば、名前は?」

 男の子は心配そうに言った。

「えっと……私は一年生の小花明日花ですけど」
「名前を教えてくれてありがとう。明日花。とにかく数時間でいい、ここで休んでってくれ」

 頭を深く下げる男の子に、私は反論できない。数時間、なら。

「心配なんだ」
「えっと、その」

 私、そんなに体調が悪く見えるんだろうか。一瞬会ったばかりのこの男の子にまで心配されて。
 そう考えているうちに、保健室の白い扉を男の子が開けた。

「先生、女の子を連れてきた。他の二人も、挨拶して」
「え。あ」
「俺。疾風。三年生の広瀬疾風(ひろせ はやて)

 疾風。なんか聞いたことある。って。