そう思った瞬間足が動いた。
 なぜなら頭の中で可憐ちゃんたちの姿がチラついたからだ。
 大丈夫、私はひとりじゃない。
 みんなが学校の中で、どこかで待っているんだから。

 そう思うと大きなため息が出たけれど、自然とそれは心地よかった。
 心臓の音が全身に響き渡る。 
 ドキン、ドキン、ドキン。バックン、バックン、バックン……。

 まるで体が丸ごと心臓になっちゃったみたいだ。目が回ってきた。
 ちょっと気持ち悪いけど、頑張れ私。
 教室までの廊下はまるで百キロ以上あるように思えた。

 遠くて、永遠に思えるぐらいに遠くて、めまいがしてきた。

「はあ、はあ」

 逃げたい。帰りたい。叫びたい。誰か。
 唇をかみしめて、私は耐える。

 そんな時だった。悲鳴が聞こえた。