「明日花、おはよう。パパは仕事に行ってくる! 明日花もほどほどに頑張れよ!」

 パパはいつも通りせわしなく出ていく。

「うん、いってらっしゃい」

 手をひらひらさせて私はそう返す。
 みんなはまだ、私の(たくら)みを知らない。
 そう思うとなんだかソワソワしてきた。
 顔も多分ニヤついてると思う。

「おはよう、明日花。なんだかご機嫌ね。可憐ちゃんのおかげかしら?」

 ママはマグカップを拭きながらママ自身もご機嫌に言った。

「うん! ママ」

 私は最後に牛乳を皿に押し流すように飲んで口の周りを拭いた。
 ゴシゴシと口を拭くとなんだか気合が入る。
 そして顔を洗い直して、家を出た。
 わざと遅刻して行かない今日は、同じ制服の生徒があちらこちらを歩いている。
 みんながこちらを見ている錯覚を覚えながら、とにかく前を見てまっすぐ歩いていく。
 大丈夫、誰も私を笑わないし、気にしてない。
 わかっている。