わかっている。きっと保健室のメンバーは気づいているって勘づいていた。
 特に可憐ちゃんは同じ一年生だし、女の子だし、なんとなく一番初めに気付くと思っていた。

「ごめんね、みんなみたいに普通になれなくて。私、やっぱりダメな子だ」
「明日花ちゃん」
「頑張りたかった。でも怖くて無理だった。足がすくんで、前に行けないの」
「謝らないで。普通とか気にしないで、そんなのどうでもいいよ。つらいよね。教室行くの、怖いよね。わかるよ、あたしも怖い」
「でも、行けているじゃん」
「無理しているだけ。本当は逃げて帰りたいよ」
「帰ろうよ。保健室で、ふたりのんびり過ごそう」
「ダメだよ。あたしたちも頑張らなきゃ、疾風が心配するよ。気が散って勉強できなくて、高校へ行けなくなっちゃう」
「可憐ちゃん……」

 わかっている。
 疾風だけじゃない、稔だって心配するだろう。
 それでも。
 自分を中心に考えて、守って、逃げてしまう。
 前へ進まなければ言い訳できるし。
 あの時頑張ってれば、やってれば、って。実際の失敗を目の当たりにしないで自分のなかった過去を美化できる。
 そんなの良くない。
 頑張るべきだ。わかっている。……だけれど。
 
 可憐ちゃんの現状を見た時、心の破裂音を聞いてしまった。
 ああなったら、どうしよう。
 怖い、絶対逃げたい、吐いちゃうかも。そしたらもっと教室にいられなくなる。
 そんなの嫌だ。怖い、怖い、怖い。