稔の言葉に胸が痛くなる。
 そう。私と三人は仲間だ。
 なのに侮辱(ぶじょく)して言い訳して自分だけ正義ヅラしようとした私は最低だ。

「ごめん、稔」

 稔と目が合わせられないまま絞(しぼ)り出すような声で言った。
 はあ、と頭の上からため息を感じる。

「僕に謝られてもね。謝る気があるなら、態度で示すんだね。僕は示すよ、これからね」
「でも、怖いよ。私、怖い。頑張るのが苦手だとか甘えている事、口に出せるぐらいはわかっているけど、認めるのが怖いよ。ねぇ、稔」
「そうだな。でもな、僕はこう思うんだ。誰だって教室に入るのは怖いって」
「え?」

 誰でも?

「いつカーストが上下するかわからない閉鎖的な教室が、怖くない人間なんかいないんじゃないのか? 人間関係なんか予測不可能。勉強ぐらいだろ、予習できるのって」

 そう言う稔は今まで見たことないぐらい先輩らしい顔をしていた。

「稔」
「急に体調を崩したり、相手が不機嫌で喧嘩する事もあるだろうしな。願うようになる人生なんかありえないんだよ。そもそも。予測ができないから面白いって一部は言うけど、それは漫画の世界だけだと僕は思うね。予測できないから、それなりに苦痛」
「うん」
「でもみんな外には見えない努力をしてきているんだって、リア充に見える疾風や、美少女の可憐の話を聞いて思ったよ」