私の胃の中にズルズルと芋虫が這いずっているような気がする。
 私もこのまま教室へ向かう道を這いずってしまいそう。
 視界が回る。揺れる。ブレる。

 そんな私をみんなは何も気にせず通り過ぎていく。
 助けて、誰か。でも助けないで。
 そんな混乱した思考回路の中私はずっと前へ。前へ、と進んでいく。

「ふ、はあ」

 実際はどれぐらいの時間が過ぎているのかは私にはわからない。
 だけれど私にとっては無限にも長いような時間に思えた。
 グラリ。

 視界が暗転しそうになった。すると背の高い男の子が、私を引っ張って階段の影に連れて行ってくれた。
 やばい。
 なんかすごく怖い感じがする。何に対してかはわからないけれど。あ、視界が暗く……。

「!?」
「大丈夫か!?」

 その人はとてもたくましくて綺麗な男の子だった。
 健康的に日焼けした肌に、意志の強そうな二つの瞳が、私をじっと見ている。
 まるで黒真珠(くろしんじゅ)のように吸い込まれそうな瞳に、ボンヤリと反射する彼を、私は見れていない。