「え」
「あたしも頑張ってみる、連れ戻しに来ないでね。って書いてある。絶対教室だ! ここにいないし」
「可憐ちゃん……嘘でしょ。可憐ちゃんまでいなくなっちゃったの」
「明日花、僕もビックリしている。とりあえず落ち着こう」
「うん」

 保健室の先生は空気になる事を徹しているのか何も言わない、動かないままだった。
 稔と私は紅茶を淹れて向き合う。
 稔の顔は真っ青だった。
 多分私も真っ青だろう。どうしよう。
 こんなすぐに可憐ちゃんまでいなくなるなんて思わなかった。
 こんな事になるのならもっと可憐ちゃんと話しておけばよかった。
 疾風の時と同じような事が頭の中をグルグルする。

「勢いが大事なのはわかるけどさぁ」

 稔がボソリと言った。
 確かにそれには同意である。だけれど。私たちに直接さようならぐらい欲しかったと思うのは、わがままだろうか。
 欲張りすぎだろうか。
 ふと、廊下の窓を開けようとすると女の子たちが歩いてくるのが見えた。