あの日以来。
 保健室はいつも通りの雰囲気に戻った。
 可憐ちゃんは教室にたまに顔は出すけど、それは給食を取りに行くとか、そういうレベルだし。
 それが気になったので、とある日の朝、保健室で聞いてみた。

「ねぇ、可憐ちゃん。なんで可憐ちゃんは先生に給食、持ってきてもらわないの?」
「あたしが休んでない、ってみんなに見せつけたいからよ。オシャレして、誰にも負けずに学校を楽しんでいるって証拠を真由たちに突きつけるためよ」

 さすが負けず嫌いな可憐ちゃんの意見は激しい。
 私もこんなにも好戦的だったら、人生はだいぶ違ったんだろうなあ。
 ボンヤリと外を見ると、知らないお姉さんが数人いた。
 誰だろう。どこかの高校の制服を着ている。

「可憐ちゃん、あれ、誰かなぁ」
「多分卒業生。何かのお礼か報告に来たんじゃないかなぁ」
「卒業生……」
「たまに来るよ、明日花。他にも大学生みたいなお姉さんお兄さんも」
「へぇ。みんなマメだね」
「母校として思い入れがあるんだろうね。二年生の先生でここの卒業生だって人もいたはずだし」
「そうなんだ。どうして知っているの?」
私、初耳なんだけど。
「明日花ちゃん達と違って読書もしないし、稔みたいに漫画も描かないから、自然に廊下の声に耳が行くだけだよ」
「なるほど」

 たしかに、可憐ちゃんはオシャレが趣味だけど、オシャレをずっとしているわけにはいかないから時間が余る。
 勉強もしているとは思うけれど、可憐ちゃんは実は頭もいいので、そんなにガッツリ自習しなくてもここで受けるテストは合格しているみたいだった。