「ずっと、明日花ちゃんは明日花ちゃんでいてほしい」
「私もだよ、可憐ちゃんの強くてカッコいいところ、大好き」
「可愛いって言ってよー明日花ちゃん」
「えへへ」

 そんな風に可憐ちゃんとじゃれ合う私の前に黒い影。稔だ。

「おい、僕も混ぜろ。ほめろ!」

 焼き餅を焼いた稔が面白くて、ふたりで吹き出す。

「稔は絵が上手い! 漫画が上手い!」
「おい、可憐、人格の長所は!?」

 ショックを受けた稔が可憐ちゃんに詰め寄る。
 それに対して可憐ちゃんは笑顔を稔に向ける。なのでホッとした表情の稔。だがしかし。

「稔に人格の長所? そんなもの、ない!」
「えええええ!? 可憐、残酷すぎないか!? 僕、何かした!?」
「何もしてない!」

 保健室の先生のおかげで、次第に保健室の雰囲気がまどろんでいく。
 みんなで笑い合い、真ん中の可憐ちゃんの席に集まる。
 おかわりの紅茶を先生が淹れてくれた。
 二杯目にだけ、普段は入れないハチミツを先生は足してくれた。

「これはみんなにも勇気が出るおまじない」

 キラキラした銀のスプーンを持ってそう呟きながらハチミツを入れる先生は、どこかから舞い降りた妖精さんのようだった。

***