「先生の、過去?」
「はい。稔君。先生もね、実は昔保健室登校だったの」
「え!? 先生が!?」
ガタンと席を揺らす可憐ちゃん。私もいろんな意味でビックリした。
「そうよ。可憐さん。それをきっかけに保健室の先生を目指したの。単純でしょ?」
えへ、と笑う保健室の先生。
こんなに人当たり良くて明るくて気さくな先生が?
嘘でしょう?
過去に、保健室登校なんて聞いても説得力ない。信じられない。
「先生、人より正直太ってるでしょ? それで運動神経もなかったから、自分に自信がなくてね。そこをつけ入れられていじめられたの」
「ひどい!」
「そうね。ひどいわよね、明日花さん。つらくって、つらくってよく泣いて。泣くからさらにいじめられて。そんな時、当時の保健室の先生に、つらかったらここにいていいよと招かれてね」
それでね、と保健室の先生は続ける。
「そんな陰湿ないじめではなかったんだけど、受ける方にとっては最悪最低の行為よね。いじめって。だから、死にたいとすら感じたわ」
みんなが目を丸くして保健室の先生を見た。
「それでも保健室には他の子もいて、みんな先生の話を聞いてくれた。その存在にどれだけ救われたか。そう。あなたたちも疾風君を救ったのよ」
保健室の先生はまだ続ける。