「じゃあな。俺は教室に戻る。またな。どうか、みんなも複雑だろうけど俺を応援してくれると嬉しい。俺はお前らが大好きだから」

 ヒラヒラと手を降って疾風は消えていく。
 私たちはそれをただ無言で見送ることしかできなかった。
 しばらくしてチャイムが鳴る。
 慌てて私たちは保健室に戻る。
 結局私たちは何もできなかった。
 ろくに何も言えなかった。
 言えるわけがながかった。
 あんなふうに決意に満ちた疾風の顔を見たら、何も言えるわけがない。
 大好き。

 疾風から繰り出されたその言葉がさらに私たちの胸に染み渡る。
 そうだよ。私たちだって、疾風が大好きだ。だけれど。
 ううん。だから。
 色々考えて、思ってしまうんだね……。
 次の授業はみんなお通夜みたいに無言で。ただ保健室の中で、ひたすらノートに向かい合って、放課後まで時間を潰した。
 だってみんな本当はわかっていたから。

 ーーこのままじゃ、絶対ダメなんだと。

***