「広瀬、戻ってきてくれたのは嬉しいけど、どうしていいか、わかんねぇよな」
「うん。今サッカー部にアイツの居場所もないし、リハビリ中だろ?」
「いい奴だから傷つけたくはないけど、だからこそ扱いにくいよな」
「戻ってきてくれたのは嬉しいけどねー」

 まさかの疾風についての会話に私たちは動きを止める。
 先輩たちはそのまま歩いて、どこかへ消えてしまった。
 そして、その背後には。
 ……死んだ目をした疾風が立っていた。

「は、疾風っ。今の聞いて……!」

 稔が怯えた声を上げると、疾風は悲しそうに笑った。

「ああ。聞いていたよ。でもまあ、そうだろうな」
「え? 悲しくないのか?」
「そりゃあ、悲しいよ、稔。だけれど、これが普通の対応だと思う」

 疾風は乾いた声で言った。覚悟していたのか、泣きそうな様子はない。

「普通」

 稔は淡々と言う疾風に呆然とした顔を向ける。
 それに対して、疾風はさらに淡々と続ける。