「いつか、いけるよ。あたしたちも」
「可憐、ちゃん」

 わかっていた。
 私たちだって本当は教室に戻りたい。
 だけれど出来なくて燻(くすぶ)って、悔しくてつらいのだ。
 そしてそれを実行した疾風が眩しくて、羨ましくて妬ましい。
 キラキラどころかギラギラ輝いて見える。まるで雪でできたお城で休む私たちを溶かしてしまいそう。

 でも、私は正直一番手で教室へ戻ったのが彼で「らしいな」って思う。
 だって疾風は、みんなのお兄ちゃんだから。
 私たちに身体を張って見本を見せてくれたのかもしれないとさえ思う。
 思うのに。

 頭ではわかっているのに。よし! さあ、自分たちも戻るぞとは言えないでいるし思わないでいる。
 どこかで行かないでいい言い訳を探している。
 だって怖いから。一度弾(はじ)かれた場所に戻る行為は、そんなに簡単なことじゃない。

 ひどく恐怖する事だ。
 またあの痛みを繰り返したら、そう考えてしまうから。

「そう、いつか」

 力無く可憐ちゃんが言って私を抱きしめる。そのいつかは、本当に来るのだろうか。

***