けれど、中身がまったく頭に入ってこない。文字が踊って見えるぐらい。
そこに、疾風がやってきた。
「疾風!」
「おはよう、明日花。どうしたの? そんなに興奮して」
「いや、別に」
何でもないけど……つい。
苦笑いを浮かべてすぐに疾風も席に座る。教科書を開いて何やらフンフン言っている疾風。誰かのノートを借りたのか、それを写し ては真面目に勉強をしている。
いつの間に、誰かにノートを借りたのだろうか。疾風は教室や部活に顔を出したのだろうか。
大量のノートを必死に写しす疾風の顔は真剣そのものでどこか焦っているように見えた。
受験生だからかもしれないけれど。
そう言えば、この前もノートと睨めっこしていたから、前から少しずつ借りていたのかもしれない。
それはきっと勇気がいる事だろう。私にはできそうにない。
だって、私はいつだって可憐ちゃんと一緒にノートを見せあっている程度で、教室とは一切関わってないのだから。
教室は怖い、狭い牢屋の様で逃げられない感じがする。
でも、いつかはあそこに戻っていかなければいけない。だって私たちは中学生なのだから。