「大会出れるよ! 本当頑張った!」
「わあああ、ありがとうございます先輩、先生」

 そういわれ抱きしめられる彼女は泣きじゃくっていた。
 ボロボロの運動靴に、焼けた肌が努力の後をはっきり見せつけている。
 でもそれは、彼女だけじゃない。青い空の下あちこちでボロボロな運動靴に汚れたユニフォームの男の子や女の子がいた。
 あの子たちは、私たちが保健室で休んでいる間ずっと未来のために頑張ってきた。
 走って、泣いて、学んで。そう思うと鼻の奥がツンとする感じがした。

 私だって、私だって頑張ってきた。そう。
 思いたいのに……自分なりには戦ってきたけれど、それだけだと気付いた瞬間、涙が一筋頬を伝った。

「明日花?」
「疾風ぇ」

 急に泣き出す私を、疾風は心配そうに見る。

「前へ進むって、怖いね」