「給食美味しかった。今日はシチューだったしな」
「稔はシチュー好きだよね」
「そうだな。明日花。まろやかでコクがあって、たまらん」

 ありふれた放課後の雑談。特にイベントのなかった今日は給食の話題で盛り上がる。
平和は最高だ。何もないことこそ正義だ。だけれど、どこかで私たちは変化を望んでいる。怖いけれど、どこかで変わらなきゃって気付いている。

「あーっ、進路どうしよう」
「うちブラス部強いところって決めているんだあ」
「そろそろ決めないとヤバいよねぇ。中卒ってわけにも行かないし」

 廊下から聞こえる声は私たちに、夢の終わりを告げていた。
 このままいけば私はその中卒まっしぐらで。
かと言ってバイトする訳でもなく。そう思っていると、今度は校庭の方から大きな歓声が聞こえた。陸上部の女の子だった。

「すごい、新記録!」
「頑張ったねぇ」

 そんな声が、保健室にまで届いている。
 確かあの子は、同じクラスの女の子だ。

 クラスで、足が遅いのに入ってよかったのかとか、よくボヤいていたのを覚えている。
 それが、努力を続けて新記録。