「ごめん、疾風」
「いや、明日花。俺らのせいじゃないし」

 ドキドキドキ。
 心臓の音が早くて重い。
 そんなふうにふらふらになっていると。

「ごめーん、邪魔だったからぁ」
「真由」
「あんたに呼び捨てされる筋合いないんですけどー」
「そんな言い方はないだろ! 明日花に謝れ!」

 私にぶつかったのは真由だったらしい。
 疾風がその言葉にイラッとした様子で言い返す。真由が露骨にショックを受けた顔で黙る。
 そしてすぐにイライラした表情に切り替わる。

「何よ、ちょっとイケメン先輩に優しくされてるからって調子乗ってるんじゃないわよ」
「疾風は、そういうのじゃないし! 私の大切な友達だから」
「そんなわけない! こんなカッコいい男の子といて好きにならないわけない!」

 なんていう恋愛脳。疾風はポカンとしている。

「イケメン先輩って、俺?」
「そうです、広瀬先輩!」
「はあ……別に、本当に大切な友達なだけだけど」