「明日花、さっき言っていたシリーズって何巻あるんだ?」
「三十かな」
「うわっ、長。飽きないか?」
「面白いから飽きないけど……」

 ここで仲良くしてれば真由の反感を買うのに、疾風はどんどん私に話しかけてくる。
 そのせいで、真由がこちらに気がついた。
 私と疾風を交互に見て、思いっきり睨みつけてくる。
 でも、疾風はその様子にまったく気が付かない。

「本当明日花はすごいよな。読書家で」
「別にすごくはないよ。疾風の方が読書家じゃん。難しい本も読むし」
「受験生だからな。一応勉強しないと」
「なるほど」

 疾風の口から受験生という言葉を聞くとビクリとする。
 隠しているわけじゃないんだから、当然なんだけど意識したくない。
 いっそ留年してくれればとまでは思いそうなぐらい、そばにいたい気持ちが強いから。
 離れたくない。目の前から消えないでほしい。いかないで。いかないで。