その疾風の言葉に私はドキリとする。
 恋愛小説についてなだけで、主題は恋愛ではないとわかっていても意外だ。
 疾風だって思春期の男の子なんだから、恋愛だって興味はある程度はあって当たり前なんだろうけれど。
 正直今の今までまるっきり恋愛に興味ないとばかり思っていた。
 私の完全な偏見である。

「行こ。明日花。休み時間中に」
「あ、うん。行くよ疾風」

 手招きされて教室を出る。最近は可憐ちゃんや疾風と図書館に行く回数が増えた。
 読書好きで図書館へ行く方が楽しいから、自然とそうなった。
 ふたりでどれがいい、これが面白かったと話し合う時間はすごく幸せだ。
 保健室を出て、のんびり私たちは談笑しながら歩く。この時間もまた、幸せなんだよね。ふたりきりで、疾風に守られながら歩く。
 他の生徒たちを気にせずに、堂々とできるのは側に疾風がいるおかげだ。

 すると、真由を見つけた。
 友達と楽しそうにイケメンアイドルについて談笑している。
 なるべく関わりたくないので、気配を消そうとする私。胸の奥がザワザワする。
 疾風を何度もチラチラ見る。早くここを去りたいと、目で訴える。 
 けれど、疾風には伝わらない。