そんなの、あり得るのだろうか。もしかして、卒業までずっとこんなんなんだろうか。嫌だなぁ。でも。新しいステップに進めている自分なんて想像もつかないや。
怖い。周りと自分が徐々に変わっていって、結果うまくできないことが怖い。それなら変わらないで、その場に止まってジタバタして言い訳していたい。
新築な私の家は、三人で住むにはすごく広いし壁も白くて綺麗だけれど、逆に言えばローンもあるはず。貯金もだいぶ使っただろう。だからもう田舎に帰ることはないのだと宣言しているようなものだし。もう逃げられない、私が踏ん張らないと。
「お、明日花じゃないか」
ふと玄関のドアがグググと開き聞き慣れた声がする。
「パパ。おかえり」
ぼんやりと考え事をしていると、仕立てたばかりのスーツ姿のパパが帰ってきた。
新しい支店勤務で明らかに疲れた様子なのに、顔は笑っている。こんなパパに、どう相談できると言うのだ。ママじゃ、パパに告げ口するに決まっているし。
「今日仕事帰りに美味しそうなお店があったから明日花のために、お土産のお菓子を買ってきたぞ」
「ありがとう、パパ」
私の大好きなまーあるいピンク色の甘い甘いイチゴ味のマカロン。セロハン紙でリボンにしてラッピングされていて、手にのせるとオモチャみたいで、受け取るだけで笑顔が溢(あふ)れる。
「どうだ。明日花はもう新しい学校には慣れたか? せっかく新しい場所なのに明日花は帰宅部を選んで後悔してないか」
「していないよ。やっぱり私はまだここの土地に慣れてないし」
「そうか。明日花は方向音痴だもんなぁ」
「あはは。そうだね」
思わず私、露骨に苦笑い。それは一応事実だから。
ママはキッチンに引っ込むと冷えたみそ汁を温める。おたまで試食して頷くと、嬉しそうに食器を並べるママ。冷蔵庫の中を見渡して夕飯の最終チェックだ。
今日の夕飯はなんだろう。なんとなく、和食の匂いがする。
ママの料理は美味しい。新しい家だって田舎にいた頃より格段に住みやすい。スーパーも徒歩で行ける。学校すらも。前は車がないとどこにも行けなかった。
本気でこの穏やかな家の空間を壊したくないと思う。
私のつまらない悩み事で、家でまでギスギスした世界を作りたくないんだ。家の中でくらい「明るく人気者の明日花」でいたい。そんな私は存在しないって、とっくにわかっているけれど。
怖い。周りと自分が徐々に変わっていって、結果うまくできないことが怖い。それなら変わらないで、その場に止まってジタバタして言い訳していたい。
新築な私の家は、三人で住むにはすごく広いし壁も白くて綺麗だけれど、逆に言えばローンもあるはず。貯金もだいぶ使っただろう。だからもう田舎に帰ることはないのだと宣言しているようなものだし。もう逃げられない、私が踏ん張らないと。
「お、明日花じゃないか」
ふと玄関のドアがグググと開き聞き慣れた声がする。
「パパ。おかえり」
ぼんやりと考え事をしていると、仕立てたばかりのスーツ姿のパパが帰ってきた。
新しい支店勤務で明らかに疲れた様子なのに、顔は笑っている。こんなパパに、どう相談できると言うのだ。ママじゃ、パパに告げ口するに決まっているし。
「今日仕事帰りに美味しそうなお店があったから明日花のために、お土産のお菓子を買ってきたぞ」
「ありがとう、パパ」
私の大好きなまーあるいピンク色の甘い甘いイチゴ味のマカロン。セロハン紙でリボンにしてラッピングされていて、手にのせるとオモチャみたいで、受け取るだけで笑顔が溢(あふ)れる。
「どうだ。明日花はもう新しい学校には慣れたか? せっかく新しい場所なのに明日花は帰宅部を選んで後悔してないか」
「していないよ。やっぱり私はまだここの土地に慣れてないし」
「そうか。明日花は方向音痴だもんなぁ」
「あはは。そうだね」
思わず私、露骨に苦笑い。それは一応事実だから。
ママはキッチンに引っ込むと冷えたみそ汁を温める。おたまで試食して頷くと、嬉しそうに食器を並べるママ。冷蔵庫の中を見渡して夕飯の最終チェックだ。
今日の夕飯はなんだろう。なんとなく、和食の匂いがする。
ママの料理は美味しい。新しい家だって田舎にいた頃より格段に住みやすい。スーパーも徒歩で行ける。学校すらも。前は車がないとどこにも行けなかった。
本気でこの穏やかな家の空間を壊したくないと思う。
私のつまらない悩み事で、家でまでギスギスした世界を作りたくないんだ。家の中でくらい「明るく人気者の明日花」でいたい。そんな私は存在しないって、とっくにわかっているけれど。