野外炊事は2班合同で、幸い美海ちゃんと一緒だ。
杏菜ちゃんとも話せるようになったんだけど、何となく壁がある感じがする。
いやそれは美海ちゃんに対しても同じか。
まゆかほど仲良くなることは難しいだろうが、せめて自然に話せるようになりたい。無理やり話題を探して喋るとか、しなくてもいい確認をするような会話ではなくて、恋バナとか推しの話とかそういうの。
野外炊事で作る料理は定番のカレー。
私はお米を炊くのが担当だから、同じ担当の圭と話していた。
「ちょ、圭!水を抜くときお米こぼしすぎ!もったいないよ!」
「うるせー、俺不器用なんだよ!」
「いや知ってるけどさ!じゃあ何でここの担当にしたの?」
料理が苦手なら火を起こす担当になればよかったのになんで難易度をあげたんだろう。
ふと小学校の調理実習でも1人だけよく分からないところで苦戦していたことを思い出した。先生も困ってたな。なんでこんなことになるのって。
思わず遠い目をしてしまったが、圭の声で現実に引き戻される。
「仕方ないだろ。ジャンケンで負けたんだから!」
半泣き半ギレで圭が言う。その様子が面白くて、気の毒だけど笑ってしまった。
ふと周りの様子を伺うと美海ちゃんと杏菜ちゃんが2人で話しているのが視界に映った。
(あ、そっか。2人とも野菜を切る担当だったんだ。あの2人って仲良かったっけ?)
2人して笑っていた。時々杏菜ちゃんが美海ちゃんをひじで小突いている。
あんなこと、私とはなかった。
美海ちゃんも杏菜ちゃんも私と話しているときより自然な感じがする。
その様子を見て、なぜかおいてけぼりになった気がした。気のせいだって自分に言い聞かせても、胸さわぎは治まらなかった。
その後ももやもやを抱えたまま、圭とああでもないこうでもないと言い合いをしながらカレー作りが終了した。
席は班ごとで、男女別に座ることになっている。美海ちゃんと私が隣に座り、杏菜ちゃんは美海ちゃんの正面に座った。
「そういえば杏菜は宮下くんと話せたの?」
(え?)
美海ちゃんの発言に驚いて、カレーをすくう手が止まった。
「んー、まぁまぁかな。緊張しすぎて噛みそうになるし、顔が赤くなって意識してるのバレたら嫌だからねー」
「あー分かるかも」
(杏菜ちゃん、宮下くんが好きってこと、美海ちゃんに話したんだ)
さっき話が盛り上がっていたのはこれが理由だったのか。
それに今「杏菜」と呼び捨てにした。私のことはちゃん付けのままなのに。
(っていうか、話に入っていけない)
私が混乱しているのをよそに、2人でポンポンと会話が進んでいく。
「美海も好きな人いるもんね」
「まぁね」
心臓が嫌なはね方をした。
(うそ・・・。美海ちゃん好きな人いたんだ。全然知らなかった。なのに、何で杏菜ちゃんが知ってるんだろ?)
きっとさっき杏菜ちゃんと恋バナになったから、流れで話しただけだ。私とはそういう会話になったことがないから、言ってなかっただけ。わざと私に内緒にしてたんじゃなくて、タイミングがなかっただけ。深い意味なんて何もない。ほんとに、たまたま。
分かってるはずなのに、なんでこんなに孤独感に襲われるのだろう。
カレーを食べるたった15分が、まるで永遠に続くかのように感じた。
それからオリエンテーリングに移っても、野外炊事のことを気にして、杏菜ちゃんと何となく喋りにくかった。私よりも美海ちゃんと話したがっているように見えたからだ。
勘違いだろうけど、美海ちゃんと話すときとテンションが違うような気がする。ここに美海ちゃんがいるわけでもないのに、そんなことが頭をよぎる。私と無理に話そうとしなくてもいいんだよ、なんて冷たいことを思ってしまう。そのせいで圭と話すことの方が多かったのかもしれない。
オリエンテーションは先生がランダムに配った地図に書かれてあるスポットを巡り、謎を解きながらアイテムを集めていくというものだった。
私達の班は宮下くんの活躍により早くゴールにたどり着くことが出来た。
その間杏菜ちゃんがきらきらとした目で宮下くんを見ていて、恋する女の子は可愛いとはよく言ったものだななんて考えていた。私は初恋もまだだがらそういうのが分からない。それも美海ちゃんが私に好きな人がいると話さなかった理由かもしれない。
ちなみに今はオリエンテーリングでまだ帰って来ていない班の待っている状態だ。ほぼ自由時間だと思っていい。まだ美海ちゃんの班は帰ってきていない。杏菜ちゃんは同じ小学校だった子に話しかけに行った。
つまり私は絶賛ぼっち中。
だからまゆかを見つけ、話しかけようとした。
「あ、まゆ「あはは、何やってんのまゆかー!」
私の声はまゆかと話していた女の子の声でかき消された。
(まゆかに新しい友達ができたんだ・・・。少し前まで、私と同じでまともに喋れる子がいなかったのに・・・)
既に呼び捨てをするぐらい仲良くなっている。呼び捨てが仲良し度を図る全てではないとわかってはいるけど、そう思えてならなかった。
だって私は美海ちゃんと杏菜ちゃんが呼び捨てで呼びあっていたこともあって不安になっているのだから。
結局私はまゆかに話しかけることができなかった。
急に独りぼっちになったような気がした。
杏菜ちゃんとも話せるようになったんだけど、何となく壁がある感じがする。
いやそれは美海ちゃんに対しても同じか。
まゆかほど仲良くなることは難しいだろうが、せめて自然に話せるようになりたい。無理やり話題を探して喋るとか、しなくてもいい確認をするような会話ではなくて、恋バナとか推しの話とかそういうの。
野外炊事で作る料理は定番のカレー。
私はお米を炊くのが担当だから、同じ担当の圭と話していた。
「ちょ、圭!水を抜くときお米こぼしすぎ!もったいないよ!」
「うるせー、俺不器用なんだよ!」
「いや知ってるけどさ!じゃあ何でここの担当にしたの?」
料理が苦手なら火を起こす担当になればよかったのになんで難易度をあげたんだろう。
ふと小学校の調理実習でも1人だけよく分からないところで苦戦していたことを思い出した。先生も困ってたな。なんでこんなことになるのって。
思わず遠い目をしてしまったが、圭の声で現実に引き戻される。
「仕方ないだろ。ジャンケンで負けたんだから!」
半泣き半ギレで圭が言う。その様子が面白くて、気の毒だけど笑ってしまった。
ふと周りの様子を伺うと美海ちゃんと杏菜ちゃんが2人で話しているのが視界に映った。
(あ、そっか。2人とも野菜を切る担当だったんだ。あの2人って仲良かったっけ?)
2人して笑っていた。時々杏菜ちゃんが美海ちゃんをひじで小突いている。
あんなこと、私とはなかった。
美海ちゃんも杏菜ちゃんも私と話しているときより自然な感じがする。
その様子を見て、なぜかおいてけぼりになった気がした。気のせいだって自分に言い聞かせても、胸さわぎは治まらなかった。
その後ももやもやを抱えたまま、圭とああでもないこうでもないと言い合いをしながらカレー作りが終了した。
席は班ごとで、男女別に座ることになっている。美海ちゃんと私が隣に座り、杏菜ちゃんは美海ちゃんの正面に座った。
「そういえば杏菜は宮下くんと話せたの?」
(え?)
美海ちゃんの発言に驚いて、カレーをすくう手が止まった。
「んー、まぁまぁかな。緊張しすぎて噛みそうになるし、顔が赤くなって意識してるのバレたら嫌だからねー」
「あー分かるかも」
(杏菜ちゃん、宮下くんが好きってこと、美海ちゃんに話したんだ)
さっき話が盛り上がっていたのはこれが理由だったのか。
それに今「杏菜」と呼び捨てにした。私のことはちゃん付けのままなのに。
(っていうか、話に入っていけない)
私が混乱しているのをよそに、2人でポンポンと会話が進んでいく。
「美海も好きな人いるもんね」
「まぁね」
心臓が嫌なはね方をした。
(うそ・・・。美海ちゃん好きな人いたんだ。全然知らなかった。なのに、何で杏菜ちゃんが知ってるんだろ?)
きっとさっき杏菜ちゃんと恋バナになったから、流れで話しただけだ。私とはそういう会話になったことがないから、言ってなかっただけ。わざと私に内緒にしてたんじゃなくて、タイミングがなかっただけ。深い意味なんて何もない。ほんとに、たまたま。
分かってるはずなのに、なんでこんなに孤独感に襲われるのだろう。
カレーを食べるたった15分が、まるで永遠に続くかのように感じた。
それからオリエンテーリングに移っても、野外炊事のことを気にして、杏菜ちゃんと何となく喋りにくかった。私よりも美海ちゃんと話したがっているように見えたからだ。
勘違いだろうけど、美海ちゃんと話すときとテンションが違うような気がする。ここに美海ちゃんがいるわけでもないのに、そんなことが頭をよぎる。私と無理に話そうとしなくてもいいんだよ、なんて冷たいことを思ってしまう。そのせいで圭と話すことの方が多かったのかもしれない。
オリエンテーションは先生がランダムに配った地図に書かれてあるスポットを巡り、謎を解きながらアイテムを集めていくというものだった。
私達の班は宮下くんの活躍により早くゴールにたどり着くことが出来た。
その間杏菜ちゃんがきらきらとした目で宮下くんを見ていて、恋する女の子は可愛いとはよく言ったものだななんて考えていた。私は初恋もまだだがらそういうのが分からない。それも美海ちゃんが私に好きな人がいると話さなかった理由かもしれない。
ちなみに今はオリエンテーリングでまだ帰って来ていない班の待っている状態だ。ほぼ自由時間だと思っていい。まだ美海ちゃんの班は帰ってきていない。杏菜ちゃんは同じ小学校だった子に話しかけに行った。
つまり私は絶賛ぼっち中。
だからまゆかを見つけ、話しかけようとした。
「あ、まゆ「あはは、何やってんのまゆかー!」
私の声はまゆかと話していた女の子の声でかき消された。
(まゆかに新しい友達ができたんだ・・・。少し前まで、私と同じでまともに喋れる子がいなかったのに・・・)
既に呼び捨てをするぐらい仲良くなっている。呼び捨てが仲良し度を図る全てではないとわかってはいるけど、そう思えてならなかった。
だって私は美海ちゃんと杏菜ちゃんが呼び捨てで呼びあっていたこともあって不安になっているのだから。
結局私はまゆかに話しかけることができなかった。
急に独りぼっちになったような気がした。