さっきの事のお礼を直接言おうと、授業終わりに圭を呼び止めた。
「圭!さっきは班長引き受けてくれてありがとう!」
「ん?別にー?ただ、班長した方が内申があがるだろーし!」
圭があっけらかんとした態度をとるから、つい悪ノリしてしまう。
「あー、圭はテストの点数悪いからねー?こうでもしないとヤバいのか!」
「はぁ?違うわ!一応新入生テストの数学で81点とったんだからな!?」
反撃してきたけど意味なし。私の方が点数上だし。
「残念!私は98点!」
「うっわまじか」
得意げに言うと圭が顔を歪めた。
コミュニケーション能力では圭に劣る私だが、勉強面においては負けたことがない。というかこれぐらいしか勝てることがない。自分で言ってて悲しいけど。
「って次美術室に移動じゃん!」
気づけばほとんどのクラスメイトがいなくなっていた。残っているのは施錠をする係の人とその友達のみ。美海ちゃんは先に行ってしまったようだ。
「あーあ、圭"なんか"に突っかかってんじゃなかった!」
「俺も反抗"なんか"すんじゃなかった!」
私達が出るのを待ってくれていた施錠をする係の人に謝りつつ圭と軽口を叩きながら教室を後にした。
その日から時間はあっという間に過ぎていって、気づけば宿泊研修前日。
あれ以来村野さんとも宮下くんともそれなりに話したが、圭と話す時のように自然に会話が進まず苦戦している。この調子で1泊2日をやり過ごせるだろうか。
私は不安になってまゆかに電話した。
「まゆかーー。班のメンバー圭以外まともに喋ったことないんだけど助けてぇーーー」
『いや私も助けてー』
私のどうしようもないことへの嘆きにまゆかが便乗する。
『ってか、まだまともに喋れる子がいない!』
「あ、分かる!美海ちゃんとも何か距離がある感じだし!」
『辛いねー』
まゆかに慰めてもらいつつも、まゆかも私と同じような状況だと知り、少なからず安心した。仲間意識とでもいうのだろう。
「明日から1泊2日、どうしようか?」
『とにかく頑張れとしか言えないなぁ。一緒にいれそうなときがあったら私も綾乃のところにいくから!』
「わぁありがとー」
『いーえー』
まゆかと一緒にいれるかもしれないというだけで心が軽くなった。
さすが親友。その存在の大きさは計り知れない。
そして迎えた宿泊研修当日。
バスの席は班ごとにまとまって座るから村野さんと隣だ。
バスが出発したあたりで村野さんがこそっと耳打ちしてきた。
「椎名さんってさ、榎並くんと仲いいよね。もしかして付き合ってるの?」
「!?」
(な、なな何言ってんの!?村野さん!!)
「別に仲良くないよ!?ただの腐れ縁の幼なじみってだけだから!」
「そーなの?」
意外!とでも言いたげな顔で村野さんが見てくる。こういう反応をされることはよくあることだが、未だに慣れない。
(圭とのこと言われるの苦手なんだよなぁ)
昔は何ともなかったが、学年があがるにつれ私達の関係性をいじられることが増えていった。付き合っているのではないか、両思いなんじゃないか、と。そう言われる度に否定してきたが、それでも食い下がってくる人がいるので厄介だ。
さらに追求されないように、逆に村野さんに質問をし返した。
「そーゆう村野さんはどうなの?好きな人とかいないの?」
「!」
村野さんの顔が赤くなる。
(この反応!好きな人いるんだ!)
「え、誰?私の知ってる人?」
村野さんは俯いたあとボソッと呟いた。それが聞き取れなくて「ん?」と聞き返す。
「宮下・・・くん」
「え、宮下くん!?」
驚きすぎて大きな声が出る。村野さんは慌ててあんぐりと開いた私の口を塞いだ。
「こ、声大きい!宮下くんに聞こえちゃう!」
「あっ」
すっかり頭から抜け落ちていたが今は班ごとにまとまって座席が振り分けられている。つまり前には圭と宮下くんが座っているわけで。
「何?呼んだ?俺がどうかしたか?」
(!)
やはり私の声が聞こえていたらしく宮下くんが振り向いてしまった。村野さんの顔がまた一段と赤くなる。
「な、何でもないから!ちゃんと前向いて!」
「ん?そっか」
まだ他にも聞きたそうだけど、村野さんが必死に前を向かせようとするから宮下くんは前を向いた。
「ごめんね、村野さん」
危うく私のせいで好きな人に気持ちがバレかけたのだ。申し訳なくなって目を見れない。
すると村野さんは私の肩に手をそっと置いた。
「大丈夫。驚くのも無理ないし。あと、村野さんじゃなくて杏菜でいいよ」
それなのに村野さん────いや、杏菜ちゃんは寛大な心で許してくれた。
「そう?じゃあ私のことも綾乃って呼んで!」
「分かった!」
お互いを名前で呼べるようになっただけで距離がグッと縮まったような気がするから不思議だ。
(意外と話せてよかった〜!この調子で頑張ろ!)
「圭!さっきは班長引き受けてくれてありがとう!」
「ん?別にー?ただ、班長した方が内申があがるだろーし!」
圭があっけらかんとした態度をとるから、つい悪ノリしてしまう。
「あー、圭はテストの点数悪いからねー?こうでもしないとヤバいのか!」
「はぁ?違うわ!一応新入生テストの数学で81点とったんだからな!?」
反撃してきたけど意味なし。私の方が点数上だし。
「残念!私は98点!」
「うっわまじか」
得意げに言うと圭が顔を歪めた。
コミュニケーション能力では圭に劣る私だが、勉強面においては負けたことがない。というかこれぐらいしか勝てることがない。自分で言ってて悲しいけど。
「って次美術室に移動じゃん!」
気づけばほとんどのクラスメイトがいなくなっていた。残っているのは施錠をする係の人とその友達のみ。美海ちゃんは先に行ってしまったようだ。
「あーあ、圭"なんか"に突っかかってんじゃなかった!」
「俺も反抗"なんか"すんじゃなかった!」
私達が出るのを待ってくれていた施錠をする係の人に謝りつつ圭と軽口を叩きながら教室を後にした。
その日から時間はあっという間に過ぎていって、気づけば宿泊研修前日。
あれ以来村野さんとも宮下くんともそれなりに話したが、圭と話す時のように自然に会話が進まず苦戦している。この調子で1泊2日をやり過ごせるだろうか。
私は不安になってまゆかに電話した。
「まゆかーー。班のメンバー圭以外まともに喋ったことないんだけど助けてぇーーー」
『いや私も助けてー』
私のどうしようもないことへの嘆きにまゆかが便乗する。
『ってか、まだまともに喋れる子がいない!』
「あ、分かる!美海ちゃんとも何か距離がある感じだし!」
『辛いねー』
まゆかに慰めてもらいつつも、まゆかも私と同じような状況だと知り、少なからず安心した。仲間意識とでもいうのだろう。
「明日から1泊2日、どうしようか?」
『とにかく頑張れとしか言えないなぁ。一緒にいれそうなときがあったら私も綾乃のところにいくから!』
「わぁありがとー」
『いーえー』
まゆかと一緒にいれるかもしれないというだけで心が軽くなった。
さすが親友。その存在の大きさは計り知れない。
そして迎えた宿泊研修当日。
バスの席は班ごとにまとまって座るから村野さんと隣だ。
バスが出発したあたりで村野さんがこそっと耳打ちしてきた。
「椎名さんってさ、榎並くんと仲いいよね。もしかして付き合ってるの?」
「!?」
(な、なな何言ってんの!?村野さん!!)
「別に仲良くないよ!?ただの腐れ縁の幼なじみってだけだから!」
「そーなの?」
意外!とでも言いたげな顔で村野さんが見てくる。こういう反応をされることはよくあることだが、未だに慣れない。
(圭とのこと言われるの苦手なんだよなぁ)
昔は何ともなかったが、学年があがるにつれ私達の関係性をいじられることが増えていった。付き合っているのではないか、両思いなんじゃないか、と。そう言われる度に否定してきたが、それでも食い下がってくる人がいるので厄介だ。
さらに追求されないように、逆に村野さんに質問をし返した。
「そーゆう村野さんはどうなの?好きな人とかいないの?」
「!」
村野さんの顔が赤くなる。
(この反応!好きな人いるんだ!)
「え、誰?私の知ってる人?」
村野さんは俯いたあとボソッと呟いた。それが聞き取れなくて「ん?」と聞き返す。
「宮下・・・くん」
「え、宮下くん!?」
驚きすぎて大きな声が出る。村野さんは慌ててあんぐりと開いた私の口を塞いだ。
「こ、声大きい!宮下くんに聞こえちゃう!」
「あっ」
すっかり頭から抜け落ちていたが今は班ごとにまとまって座席が振り分けられている。つまり前には圭と宮下くんが座っているわけで。
「何?呼んだ?俺がどうかしたか?」
(!)
やはり私の声が聞こえていたらしく宮下くんが振り向いてしまった。村野さんの顔がまた一段と赤くなる。
「な、何でもないから!ちゃんと前向いて!」
「ん?そっか」
まだ他にも聞きたそうだけど、村野さんが必死に前を向かせようとするから宮下くんは前を向いた。
「ごめんね、村野さん」
危うく私のせいで好きな人に気持ちがバレかけたのだ。申し訳なくなって目を見れない。
すると村野さんは私の肩に手をそっと置いた。
「大丈夫。驚くのも無理ないし。あと、村野さんじゃなくて杏菜でいいよ」
それなのに村野さん────いや、杏菜ちゃんは寛大な心で許してくれた。
「そう?じゃあ私のことも綾乃って呼んで!」
「分かった!」
お互いを名前で呼べるようになっただけで距離がグッと縮まったような気がするから不思議だ。
(意外と話せてよかった〜!この調子で頑張ろ!)