美海ちゃんと杏菜ちゃんにグループを抜けた理由を話したその日の帰り道。

「けーい!!!」

 私は前を歩く圭を呼び止めた。

「ん?」
「今日は一緒に帰ろ!」
「いいけど・・・なんか機嫌いいな」

 嫌な予感がするとでも言いたげな目を向けてくる。
 失礼だ。でも今の私は本当に機嫌がいいので見逃してあげる。

「聞いてよ圭!今日ね、久々に美海ちゃんと杏菜ちゃんと話せたの」
「お、よかったじゃん」

 話すまでに色々あったがそれは伏せておく。グループの子達────いや、元同じグループの子達が圭と話したがっていたから。確かに私は利用されていたけれど、私だって独りにならないために無意識にあの子たちを利用してきた。だからこれでおあいこだろう。

「ね。それで2人にグループ抜けた理由、ちゃんと話したんだよね。そしたらすっきりしたし、すれ違いが起きてたって分かったんだ。だからって2人のところに戻りはしないけどね」

 戻っても美海ちゃんと杏菜ちゃんだけの共通の話題がいくつもあることに変わりはない。その話題になる度に2人に気を使われるとか、そんなことはさせたくないのだ。

 明日またボッチに逆戻りすることになる。またボッチに逆戻りすることになる。でも最初の頃より気持ちが軽いのは、同じ状況で頑張るまゆかと、困ったときに助けてくれる圭がいるからだ。
 照れくさくて面と向かっては言わないけど、2人は私にとってかけがえのない友達であり、私の居場所だ。

「とにかく、2人にちゃんと話せた私頑張ったよね。褒めてくれてもいいんだよ!」
「はいはい偉い偉い」
「雑っ!!」

 もっとちゃんと褒めなよと抗議していると頭にポンと手を乗せられた。それから髪を流れに逆らいつつ撫でられる。
 圭の予想外の行動に驚きが隠せない。

「え、これは何」
「褒めてんだよ」
「髪ぐしゃぐしゃになるんだけど」
「もう帰るだけだからいいだろ」

 そういう問題じゃないと手をはらおうとしたが、辞めておいた。小さい頃以来人に頭を撫でられていなかったせいか、とても安堵感があふれたからもう少しこのままでいいやって思ったのだ。
 そんな私を見て圭は満足そうに笑った。





 みんなは人と友達になるきっかけを覚えているものだろうか。

 私は覚えていない。
 まゆかとも圭とも気づいたら一緒にいた。何となくこの年からだよね、というのはあるが、とても曖昧だ。

 それだけ友達になるのは些細なことなのだろう。
 たまたま隣の席だったとか、委員会で一緒になったからだとか、そんな感じ。
 結局は"たまたま"その場に居合わせたから友達になれたのだと、今なら思う。一時的にいたグループだってたまたま美術の班が一緒になったことがきっかけだしね。美海ちゃんだってたまたま林間学校で同じ野菜係だったから杏菜ちゃんと友達になった。

 そして今回、私にそれらが"たまたま"起こらなかったから最終的に独りになった。

 もし話が合う子とたまたま出会えていればこうはなっていなかった。
 全ては巡り合わせに過ぎない。

 ならばたまたま独りになったらどうすべきなのだろうか。

 私には分からない。
 きっと答えのない問題なのだろう。
 ひとつ言えることは頑張るしかないということだ。何だそれって思われるかもしれないけど。たかが偶然で友達を作れなかったくせに、さらに努力を有するなんてふざけんな、と言われても仕方ない。

 それでも頑張る意義はあると思う。頑張った末に築けた友情は一生のものだと思うから。
 私は今回のことを通して、まゆかと圭が代わりのきかない存在であることを改めて実感した。

 前に進むため、たった1歩でも、小さくても、何かが変わるきっかけになるように、私はこれを胸を刻む。

 そして過去の私に送る。
 まだ青く脆い私の精一杯は決して間違っていなかったと。
 あの頃は苦しくてしんどくて消えたかったけど、未来は暖かいものだと。

 思春期の中もがく私へ。


〈了〉