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 大好きなイラストレーターのイラストを見て、頬を緩める。大好きな音楽をガンガンに掛けて、好きなものだけ見て、目も耳も幸せだと自分を誤魔化せた。

 部屋の外からは、おじさんとおばさんのケンカの声が絶え間なく微かに漏れ聞こえているし、クラスメイトたちのメッセージは悪意に満ちている文章を絶え間なく通知で送りつけて来ていた。

 どんなに辛い日々の中でも、好きなものだけの世界に浸れば、まだ大丈夫と自分を誤魔化せた。

 イラストに毎回コメントしてる犬のアイコンを見つけて、つい嬉しくなる。この人の言葉はいつも素直でまっすぐだ。何回だって同じイラストレーターさんに「好きです」と愛を告げていた。

 どんな人なんだろう。アラタという名前のその人のホームに飛ぼうとタップすれば、位置が少しずれていたらしい。すぐに表示される「フォローしました」。焦って外そうとしたものの、すぐに「フォローされました」の通知が表示されて、外すことは出来なかった。

 届いたメッセージはシンプルなもので、でも、優しい形をしてる。

【フォローありがとうございます。俺も同じイラストレーターさんが好きなので仲良くしてください】

 なんて返そうか。初めて仲良くなれそうな人に出会えたこと、私のフォロワーの1()の数字が嬉しくて何度も開いては閉じてを繰り返す。仲良くできるだろうか? こんな私が仲良くなりたいと思うこと自体が烏滸がましいだろうか。

【プロフィール見ました! 多分、同い年だと思うので、仲良くしてください】

 考えても答えは出ないから、当たり障りのない答えを打ち込んでスマホを閉じる。返信がもう来ないかもしれない。誰にだって同じ文を送っているのかもしれない。

 それでも、私宛に届けられたリプライは、私の心を浮かせるのには十分だった。部屋の外から聞こえるおじさんとおばさんのケンカの声は、もう聞こえなくなっている。

【ミチルさん、同い年なんですね。イラスト以外も投稿してるんで、うるさかったらミュートしてくださいね】