初めて、アラタの嘘を知ってしまった。

  夜になるたびに、明日までの長い時間を「大丈夫だよ」と温めてくれるのは、私の唯一の親友と言えるアラタだった。私は夜が怖い。朝に繋がってるのはわかっているのに、ただ一人痛みに耐えてる苦痛の時間、そんなイメージが夜だった。

 私をいつも温めてくれてる優しいアラタが嘘をついている。それに気づいたのは、通話中、初めての弱音を聞いた時だった。私は、寝る準備を終えて、ただぼやっとした夜の輪郭を眺めながらいつも通りアラタとくだらない話を繰り返す。

 どうや、学校で何かあったらしい。何かが、何かは私には打ち明けてくれない。けどアラタがため息混じりに溢した言葉は「もう疲れちゃった」だった。

 いつだって私の方が弱虫で、泣き虫で、小さい出来事に泣いてはアラタに慰められてきた。だから、正直、アラタがそんなことを言うと思わなくてうまく答えを返せなかった。

 パッと布団から起き上がれば、二人ぼっちの夜の色が濃くなった気がする。

「ミチル、聞いてる? 今の嘘だって、ミチルに心配されたくて言ってみた。茶化したみたいでごめん」

 顔が見えないからウソか、本当か、確かめる術はない。本当だったら。

 アラタとの話題になるかと思ってダウンロードしたアプリの通知が絶え間なく届く。フィクションアプリだと思ってダウンロードしたのに。この「ウソ発見器」は、本物なのかもしれない。

 試しに嘘で返答しようと頭を捻る。そんなこと思ってもないけど。

「そうだよね、アラタに限ってそんなこと」

 ピコン。
 
 やっぱり、これはどうやら本物らしい。
 
 アプリを開いても通知の設定画面とタイトル画面があるだけで、操作がわからないから放置していたのに。本物だ、なんて。