私はそこで現実に引き戻された。
気付くと、頬が濡れている。無意識に、涙が出ていた。
そこでふと棚に置いてある写真を見つめる。
「……カナ」
自然と声が漏れる。
その写真は卒業式に撮った、2人だけのツーショット。
カナも私も、中学校の制服姿だった。
……カナの制服姿は、これが最初で最後だった。
そう思うと、悲しいなんて言葉じゃ足りないくらいに涙が溢れそうで。
だけど、涙を流してる暇なんて無かった。私は学校へ行かなくてはならない。
……学校になんて行きたくなかった。
だって、私は……。
それでも、行かなくてはいけない。ただ、心配されないようにするためだけに。身内からだけは、嫌われないようにするために。
私は、汚れの着いた制服をそのまま着た。