3月16日。
私達は無事に小学校を卒業した。

私たち二人は、クラスメイトが行く北中ではなく、南中に行くことが決まっていた。

二人だけ、ということがとても嬉しかった私は春休みもずっと舞い上がっていた。

4月になれば知っているのはお互いだけだと言うのに、私は春休みもカナを連れ回して遊んでいた。

ある時は山に。
ある時は海に。
ある時は川に。
ある時は花畑に。
ある時は公園に。
ある時は図書館に。
ある時は遊園地に。
ある時は私の家に。
ある時はカナの家に。
ある時は小学校のグラウンドに。

毎日毎日、どこかへ行っては遊んでいた。
母は、いつも寂しいな、と言いながらも笑って送ってくれた。

カナもいつも私が誘うと優しく笑顔で着いてきてくれた。


そんな毎日が、もうすぐ壊れてしまうだなんて、文字通り1mmも、思っていなかった。


「カナ、明日の準備できた?」
次の日に入学式を控えた、春休みの最終日だった。
「出来たよ、ほんとに楽しみ。いよいよ中学生だね」
カナは明るく言った。そこで私はふと疑問に思ったことを話す。
「明日で中学生なら、今はまだ小学生なのかな」
「どうだろうね……って、卒業式も同じ話したっけ」
「あはは、確かに!」
私の馬鹿げた質問にも、カナは笑って答えてくれた。

その日私達は、目の前にある公園で遊んでいた。
私達の家の道路を挟んで反対側にある、小さめの公園。そう言っても遊具はあまりたくさんはないけれど、人が居なく静かで、木のぬくもりや小鳥のさえずりが聞こえて気持ちが良いので、よく遊んでいる。

その日も遊んで、そろそろ帰ろうか、とカナが言ったので帰ることにした私達。

信号が青になり、2人で手を繋いで歩いている最中だった。



青い車が、私たち目掛けて突っ込んできた。
とても早いスピード。
私は何もすることが出来なかった。

……だけど、カナは違った。

私の目の前に立ち、まだ私とあまり変わらないくらいの小さな手と体を精一杯広げて、私を庇ってくれた。

光が目に刺さる。
トラックが目の前に来る。

それすらもスローモーションに見えた。

そこで私の意識は途絶えた。