「やっぱり僕のあげるよ、お腹空くでしょう」
私は運ばれてきた2つのお寿司を口へ放り投げて「ご馳走様でした。」と行ったところ、空夜くんが「まだ足りないよ!もっと食べて!」と言ってきたのだ。
正直、あまり食べたくは無かった。いつも昼は食べないので、食欲が湧かないから。
「大丈夫、いらない」
「いやいや、お腹空くよ?」
「食欲無い」
「風邪でも引いてるの?その方が食べなきゃだめだよ!」
「風邪は引いてない。いらない」
ずっとこの攻防が繰り返されており、私はわざと疲れた顔を見せたところ、さっきの言葉に繋がったのだ。
絶対に食べたくない。けれど彼も思っていたより頑固……というより子供のわがままを聞いているような気分だったけれど、そういう性格からなかなか譲ってくれなかった。
私はそれ以上会話をする気になれず、1人で荷物を持って出ていこうとした。
けれど、その腕を空夜くんが掴んだ。
「待って……ごめん……っ!」
彼の、必死になって私を止めようとしている姿が幼く見える。
私は少しだけ口角を上げてまた席に着いた。
その顔に驚いたのか空夜くんは目を見開いている。
「はづきの笑った顔……初めて見た」
確かに、今思えば空夜くんの前で笑ったことはない気がする。というか、私が中学生になってからは一度も笑ったことも泣いたこともない。
顔のした部分を少し隠すように手を当てて、ちょっとだけ照れるような顔をした空夜くんを見ていると、またこの前のように、彼のことが幼く感じられた。
18歳と言っていて、背も私とは頭一個分ほど違うから偽ってはいない気がするのに。
いつまでも性格が幼い、という人はいる。けれどここまで幼く感じるのは何故だろう。
私よりたくさんのことを経験してるはずなのに。その経験は私の方が多い気がするのは、なぜなんだろう。
「すぐ食べるから、待ってて」
そういってまぐろのお寿司を1つ掴むと無作法に口に放り投げる。数分も経たないうちに彼は全てのお皿を完食していた。
私が会計に行こうとするところを空夜くんが止めた。
「僕が払うよ」
「えっ……いやいや、せめて自分の分くらい……」
「僕が誘ったんだし、付き合ってもらっちゃったからさ」
また、その笑顔。くしゃっと目をつぶって笑うその笑顔はどんな時でも18歳に見えないほど可愛らしかった。
ここまでくると流石に彼は引いてくれないと思ったので、有難く奢らせてもらった。
「じゃあ、次はここ」
そういって、すぐ近くにあるスイーツ屋さんを指さした空夜くん。
まだ行くの?と聞こうかと思ったけれど、私は彼を止める権利なんてないし、何より私はスイーツが大好きなので空夜くんが行きたがっているのなら喜んで行かせてもらう。
「いらっしゃいませー」
定員さんの声が、人の少ない店内に響く。
「はづきはどれにする?」
私が買うことを最初からわかってたように聞いてくる。
「まだ、決まってない」
私は本当はショーケースに入った、チョコバナナクレープが食べたかったけれど、面と向かって言うのは少し恥ずかしい。
「僕はこれにしようかな」
そういって指をさしたのは、私が買いたかったチョコバナナクレープだった。
「……私も、同じのにする」
そう言うのはさっきよりもだいぶ楽だった。空夜くんは私がそう言いたいのが分かっていたように
「すみませーん、チョコバナナクレープ2つで」
と素早く対応してくれた。
テイクアウトしたそのクレープを、生クリームが溶けないうちに食べようという空夜くんの提案により公園に行って食べることにした。
あの、カナとの思い出の公園。赤、黄色、青、それだけじゃ表せない幾つもの複雑な色をした、たくさんの花々が咲き乱れている。
「懐かしい……」
「空夜くんも、来たことあるんだ」
「うん、僕が小学生の時に何回も来たよ。あの時から遊具はなかったんだけどね」
「空夜くんの時からなかったんだ」
私の時にももう遊具はなかった。ただダークブラウンの木のベンチがぽつんと置いてあるだけ。だけどその頃から花が咲いていたので目の前は賑やかだった。
「……ほんとに、懐かしい……」
「空夜くんの、小学校は?」
「……第一小学校」
心の底から懐かしくて愛おしいような表情で、そう言った空夜くんは、いつもより大人びていた。
「……おんなじだ」
ということは私が小学校一年生の頃、彼は四年生のはずだ。全校集会などで会ったことがあるはず。
けれど、彼のような人は見たことがなかった。多分今の髪は染めているはずだから、小学校の頃は黒色。だとしても目が白い人なら有名人のはずだった。
私の記憶には、ない。卒業式ではそれぞれの名前が呼ばれて行くけれどその時に聞いた記憶もない。
もしかしたら小四になる前に引っ越したのかもしれない。今はまたこっちに帰ってきたとか。
私は1度思考をやめて、クレープをかじった。
一口だけだったけれど、懐かしい、幸せで優しい味が口の中を満たした。
私は運ばれてきた2つのお寿司を口へ放り投げて「ご馳走様でした。」と行ったところ、空夜くんが「まだ足りないよ!もっと食べて!」と言ってきたのだ。
正直、あまり食べたくは無かった。いつも昼は食べないので、食欲が湧かないから。
「大丈夫、いらない」
「いやいや、お腹空くよ?」
「食欲無い」
「風邪でも引いてるの?その方が食べなきゃだめだよ!」
「風邪は引いてない。いらない」
ずっとこの攻防が繰り返されており、私はわざと疲れた顔を見せたところ、さっきの言葉に繋がったのだ。
絶対に食べたくない。けれど彼も思っていたより頑固……というより子供のわがままを聞いているような気分だったけれど、そういう性格からなかなか譲ってくれなかった。
私はそれ以上会話をする気になれず、1人で荷物を持って出ていこうとした。
けれど、その腕を空夜くんが掴んだ。
「待って……ごめん……っ!」
彼の、必死になって私を止めようとしている姿が幼く見える。
私は少しだけ口角を上げてまた席に着いた。
その顔に驚いたのか空夜くんは目を見開いている。
「はづきの笑った顔……初めて見た」
確かに、今思えば空夜くんの前で笑ったことはない気がする。というか、私が中学生になってからは一度も笑ったことも泣いたこともない。
顔のした部分を少し隠すように手を当てて、ちょっとだけ照れるような顔をした空夜くんを見ていると、またこの前のように、彼のことが幼く感じられた。
18歳と言っていて、背も私とは頭一個分ほど違うから偽ってはいない気がするのに。
いつまでも性格が幼い、という人はいる。けれどここまで幼く感じるのは何故だろう。
私よりたくさんのことを経験してるはずなのに。その経験は私の方が多い気がするのは、なぜなんだろう。
「すぐ食べるから、待ってて」
そういってまぐろのお寿司を1つ掴むと無作法に口に放り投げる。数分も経たないうちに彼は全てのお皿を完食していた。
私が会計に行こうとするところを空夜くんが止めた。
「僕が払うよ」
「えっ……いやいや、せめて自分の分くらい……」
「僕が誘ったんだし、付き合ってもらっちゃったからさ」
また、その笑顔。くしゃっと目をつぶって笑うその笑顔はどんな時でも18歳に見えないほど可愛らしかった。
ここまでくると流石に彼は引いてくれないと思ったので、有難く奢らせてもらった。
「じゃあ、次はここ」
そういって、すぐ近くにあるスイーツ屋さんを指さした空夜くん。
まだ行くの?と聞こうかと思ったけれど、私は彼を止める権利なんてないし、何より私はスイーツが大好きなので空夜くんが行きたがっているのなら喜んで行かせてもらう。
「いらっしゃいませー」
定員さんの声が、人の少ない店内に響く。
「はづきはどれにする?」
私が買うことを最初からわかってたように聞いてくる。
「まだ、決まってない」
私は本当はショーケースに入った、チョコバナナクレープが食べたかったけれど、面と向かって言うのは少し恥ずかしい。
「僕はこれにしようかな」
そういって指をさしたのは、私が買いたかったチョコバナナクレープだった。
「……私も、同じのにする」
そう言うのはさっきよりもだいぶ楽だった。空夜くんは私がそう言いたいのが分かっていたように
「すみませーん、チョコバナナクレープ2つで」
と素早く対応してくれた。
テイクアウトしたそのクレープを、生クリームが溶けないうちに食べようという空夜くんの提案により公園に行って食べることにした。
あの、カナとの思い出の公園。赤、黄色、青、それだけじゃ表せない幾つもの複雑な色をした、たくさんの花々が咲き乱れている。
「懐かしい……」
「空夜くんも、来たことあるんだ」
「うん、僕が小学生の時に何回も来たよ。あの時から遊具はなかったんだけどね」
「空夜くんの時からなかったんだ」
私の時にももう遊具はなかった。ただダークブラウンの木のベンチがぽつんと置いてあるだけ。だけどその頃から花が咲いていたので目の前は賑やかだった。
「……ほんとに、懐かしい……」
「空夜くんの、小学校は?」
「……第一小学校」
心の底から懐かしくて愛おしいような表情で、そう言った空夜くんは、いつもより大人びていた。
「……おんなじだ」
ということは私が小学校一年生の頃、彼は四年生のはずだ。全校集会などで会ったことがあるはず。
けれど、彼のような人は見たことがなかった。多分今の髪は染めているはずだから、小学校の頃は黒色。だとしても目が白い人なら有名人のはずだった。
私の記憶には、ない。卒業式ではそれぞれの名前が呼ばれて行くけれどその時に聞いた記憶もない。
もしかしたら小四になる前に引っ越したのかもしれない。今はまたこっちに帰ってきたとか。
私は1度思考をやめて、クレープをかじった。
一口だけだったけれど、懐かしい、幸せで優しい味が口の中を満たした。