1人で道を歩く。
その度に揺れる長い黒い髪。
この真っ黒な髪と目が、私は大嫌いだった。
だけど、空夜くんは好きだと言ってくれた。
「しっこく、か……」
小さくつぶやく。漆黒とは本当の黒、とでも言えばいいのだろうか。
空夜くんは漆黒とも、透き通った黒とも言っていた。透き通った黒ってなんだろう。というか、透き通った黒と漆黒って矛盾じゃないのかな、と今更に思う。
漆黒っていうのは真っ黒……だと思っている。でも私の知識が合ってるとは思わない。
漆黒って、なんだろう
だけど、なぜか空夜くんに言われたらそんなに悪いものでは無いのかもしれない、と思えるから不思議だ。
「……透き通った、黒……」
何故かその言葉が頭から離れなかった。
✻
「……ただいま」
重いドアを開き、中へ足を踏み入れる。
蒸し暑く、まとわりつくような空気だったのが無くなり、クーラーのかかったひんやりとした空気に包まれる。
「おかえりなさい」
”話すことは最低限、お互いのパーソナルスペースには入らない”
黙認のルールが私たちの距離を遠くする。私が小学生だった頃のように優しく微笑んでくれるお母さんは、もうそこにはいなかった。
部屋のドアを開けてベッドに倒れ込む。そのまま寝てしまおうかとも思ったけれど、ふと思い出したことがあった。
充電してあったスマホを取り、検索画面を開く。そして『漆黒』と入力する。
「”うるしを塗ったように黒くて光沢があること”……」
思わず口に出す。
空夜くんが言っていたのは、光沢があって透明な黒……ということか。私は何故かその言葉がとても気に入った。
「透明で光沢のある黒……」
自分の髪が綺麗だとは全く思わないけれど、そう言われるとそんなに嫌なものでも無い気がするから不思議だ。
明日も、同じ時間に会いたいと言われ私は承諾した。今となっては少しだけ、ほんの少しだけ楽しみでもあった。
だけど、そんな自分に嫌気がさす。
これで裏切られてしまったら。どうせ私の事なんか、誰も気にしてない。きっと空夜くんもただ周りとは少し違う私に遊び心で接しているだけ。
そんなふうに考えてしまうことが最近何年も癖になってしまっていた。どんなに向こうから話しかけてもらえても、私は心を開くことが出来ないままでいた。
だから、空夜くんに少しでも会いたいと思ってしまった自分が馬鹿らしくて、思わず自称気味の嘲笑を顔に浮かべる。
だけど、やっぱり少しだけ、ほんとにちょっとだけ会いたいと思ってしまって。
そんな自分が嫌いで、だけど自分の心に嘘をつく自分も嫌いで、自己嫌悪になる。
そんな悪夢のループだった。
その度に揺れる長い黒い髪。
この真っ黒な髪と目が、私は大嫌いだった。
だけど、空夜くんは好きだと言ってくれた。
「しっこく、か……」
小さくつぶやく。漆黒とは本当の黒、とでも言えばいいのだろうか。
空夜くんは漆黒とも、透き通った黒とも言っていた。透き通った黒ってなんだろう。というか、透き通った黒と漆黒って矛盾じゃないのかな、と今更に思う。
漆黒っていうのは真っ黒……だと思っている。でも私の知識が合ってるとは思わない。
漆黒って、なんだろう
だけど、なぜか空夜くんに言われたらそんなに悪いものでは無いのかもしれない、と思えるから不思議だ。
「……透き通った、黒……」
何故かその言葉が頭から離れなかった。
✻
「……ただいま」
重いドアを開き、中へ足を踏み入れる。
蒸し暑く、まとわりつくような空気だったのが無くなり、クーラーのかかったひんやりとした空気に包まれる。
「おかえりなさい」
”話すことは最低限、お互いのパーソナルスペースには入らない”
黙認のルールが私たちの距離を遠くする。私が小学生だった頃のように優しく微笑んでくれるお母さんは、もうそこにはいなかった。
部屋のドアを開けてベッドに倒れ込む。そのまま寝てしまおうかとも思ったけれど、ふと思い出したことがあった。
充電してあったスマホを取り、検索画面を開く。そして『漆黒』と入力する。
「”うるしを塗ったように黒くて光沢があること”……」
思わず口に出す。
空夜くんが言っていたのは、光沢があって透明な黒……ということか。私は何故かその言葉がとても気に入った。
「透明で光沢のある黒……」
自分の髪が綺麗だとは全く思わないけれど、そう言われるとそんなに嫌なものでも無い気がするから不思議だ。
明日も、同じ時間に会いたいと言われ私は承諾した。今となっては少しだけ、ほんの少しだけ楽しみでもあった。
だけど、そんな自分に嫌気がさす。
これで裏切られてしまったら。どうせ私の事なんか、誰も気にしてない。きっと空夜くんもただ周りとは少し違う私に遊び心で接しているだけ。
そんなふうに考えてしまうことが最近何年も癖になってしまっていた。どんなに向こうから話しかけてもらえても、私は心を開くことが出来ないままでいた。
だから、空夜くんに少しでも会いたいと思ってしまった自分が馬鹿らしくて、思わず自称気味の嘲笑を顔に浮かべる。
だけど、やっぱり少しだけ、ほんとにちょっとだけ会いたいと思ってしまって。
そんな自分が嫌いで、だけど自分の心に嘘をつく自分も嫌いで、自己嫌悪になる。
そんな悪夢のループだった。