私たち3年生は人数が多いので、クラスによって1階と2階に分かれている。私のクラスは2階にある7組。
長い通路を通って階段をあがる。
その時、上から女子の4人の集団が来た。それは、私のクラスの、いじめっ子だった。
「あ、風土じゃーん」
「え、あのブスに名前なんかあんの?」
「汚れた制服で登校とかきもー」
私は私は何も言わない。その方がいいと知っているから。
「ぼっち登校とかかわいそー」
「貧乏さんは大変だなぁー」
「1人でも強い私最強、とか思ってんの?ダッサ」
酷い言われ放題だけれど、別に心に響くことなんてないのだから気にしないで無言で通り過ぎようとした。
「……それなら何されても痛いなんて言わないよなぁ?」
そう言って思い切り私の体を押す。
予想していなかった私はバランスを崩して階段から転げ落ちた。
……だけど、痛くなんて無かった。
「うわ、また無表情」
「もういいわ、行こ」
そう言って彼女たちは私の横を通り過ぎて行った。
ズキズキといっている背中を無視して階段を上る。幸い、教室は階段のすぐ近く。
ドアを開けて廊下側の1番前の席に座る。カバンの中からボロボロの教科書とノートを取り出す。ビリビリに破かれ、もう何ページか分からないそのページを眺める。
それはとある物語の1ページだった。
「君に出会って、何も感じなかった私はやっと過去を思いだすことが出来た。だけど、その過去は悲惨なものだった。クラスメイトからはいじめられ、お父さんからは毎日暴力を受けていた。だけど、私の世界にはもう君がいるから大丈夫。」
そんな文が書かれていた。
前半は私のようだけど、後半は絶対に私では無い。
その物語は、「暗闇に優しさをくれたのは。」という題名が付けられていた。
……優しさなんてもの、誰も私にくれない。
小説の主人公はこんなにも愛されるのに、脇役は誰も愛してなんかくれない。それどころか名前も顔も描かれていない。誰の目にも映らないところにただいるだけの存在。
居た方がなんとなくいいから。その理由だけで居続ける脇役、それが私だった。
でも、居なくても別に気にならない。それが私。
……いなくてもいいなら、消えようかな。
何度も思ったことがある。だって生きてる意味なんかない。お母さんには悪い、けれど。
だって、いなくてもいい存在が生きてて、いいことなんてないから。邪魔者は、消えた方がいい。誰かの邪魔になって生きるのなら、私の人生に価値なんてない。
いつも思いとどまっていた、”自殺”
……やってみようかな。これで全部終わっても、後悔なんて何一つないから。
だって、優しい君が死んで、最低な私が生きてるなんて、そんなのだめでしょう?そんなの酷いでしょう?
私は死んでもいい人間だから。いや、死んだ方がいい人間だから。
ホームルームが始まる前に、私はこっそり教室を抜け出した。