クラスの雰囲気は一向に戻らないまま、僕らは夏休みを迎えた。
 当初の勢いだったら、今ごろきっと合唱に向けてさらに熱を上げていた所だったんだろうけれど、今の僕らにそんな情熱は無く、練習と言える練習は八月から週二回の合唱練習のみで、パート練習は自主練習という形で行う事になった。
 つまりは別にやらなくてもいいと言うわけだ。そうなると女子は惰性で週一回くらいは集まりそうだけれど、男子は恐らく誰一人として集まらないだろう。
 完全にみんな投げやりだった。先生もこんな状態で強制したくなかったんだろう。きっとかなり譲歩した上での週二回の合唱練習だ。
 でも、これは僕にとって逆に好都合だった。
 自主練習となったパート練習に顔を出さなくて良くなったので、僕は遠慮なく灰坂との特訓に打ち込める。あの衝突が起きる直前の合唱を考えれば、恐らく本番一週間前に実行に移せば、きっとなんとかなるはずだ。奇跡を起こせる。
 こういう計算もほとんど憶測でしかないのに、僕には何故だか変に自信があった。