「うん、冷は表情が分かりやすいから」と暖が言う。

昨日も同じようなことをチカに言われた気がする。

自分はどちらかといえば表情が乏しい方だと思う。

周りに何を考えているか分からないと言われ、もっと感情を上手くだすことができたらと悩んでいた時期もあったくらいだ。

これは私の憶測だけど、二人だからこそ私の表情の違いが分かるのかもしれないなと思った。

いつも他人の表情をよく見ていて、優しい二人。
相手がほしい言葉をかけてあげられるそんな人たち。

私は多分そんなふうにはなれないな、と思う。
でも、私はチカや暖とは違うから。

誰かのことを羨ましいだとか妬んだりしてもきっとその先には相手や自分を苦しめるものしか残らないから。

それは、私が一番よく知っている。

「 私、表情が分かりにくいって今まで言われてきたの。だからきっと暖がすごいんだと思うよ」

と返すと、暖は驚いたような表情をしていた。

あまりこの返しは良くなかっただろうか。
暖の言ったことまで否定するような言い方になってしまったな、と後から後悔する。

「…そうかな。冷はずっと前から、素直で思ったことを伝えられる子だと僕は思ってるよ」

そう伝えてくれた彼は穏やかで、でもなぜか切なさが入り交じるようなそんな顔をしている気がした。

____ずっと前から。

暖の言葉に多少の違和感をもつ。
ずっと前からとは、私と暖が最初に話した教室でのことを言っているのだろうか。

それにしては最近のことのような、そう思ったが口にはださなかった。

ただ言葉の言いまわしを間違えだけかもしれないし、それにわざわざ暖にそのことを指摘するのもあまり気が乗らなかった。