「…冷か。」
ぼそっと何かを呟く彼の声は小さくて聞こえず「なんか言った?」と聞き返してしまった。

「別に。なんでもない」
相変わらずなんだかぶっきらぼうな返し方だなぁと思う。

けれど別にそれが嫌な訳ではない。
こんなことを思うのは図々しいが、私に少し似ているなと感じてしまったのだ。

ここまでの言い方ではないけれど私も今まで冷たい、何を考えてるのか分からないとか色々なことを言われてきた。

もしかすると桐生くんもただ感情表現が苦手なだけなのかもしれない。

そう思いもう一度彼の顔を見る。よく見ると瞳の色も真っだ。
見れば見るほど暖の対極にいるような人だなと思う。

例えるならば、N極とS極。
一生交わりのない二人というような感じだ。
二人が話しているところは全く想像がつかなかった。

「何ジロジロ見てるの?てか、このこと暖には絶対に言うなよ」
そう言って釘を刺してから彼はすぐに教室をでていってしまった。

あっ…という私の声だけが教室に取り残される。

結局なんだったのかあまり分からないまま、その時間はいつのまにか終わった。