まだほんの少しだけ痛む頭で考える。
───私は何かを忘れようとしている?

すごく…大切なことだった気がする。
でも暖に「もう大丈夫?」と声をかけられると、これ以上は心配をかける訳にはいかないとこの事は考えないようにした。

「ごめん、心配かけちゃって。ただの偏頭痛だと思う」
「そっか、天気最近悪いもんね。無理しないでね」
「うん、ありがとう」

私たちが話していると少しづつクラスメイトたちが教室にはいってくる。
このままでは、私が暖と話していたらなんで?と不審がられてしまう。

「あ、あのじゃあ私席戻るね」と伝えて私はそそくさと自分の席についた。

暖は急な私の言葉に不思議そうにしていたが、他の子に呼ばれて話しに行ったようだった。

何の話をしているのだろうか?
あまり良くないが少しだけ聞き耳をたてる。

「暖くん、あの連絡先交換しない?クラスメイトだし…仲良くしたいなと思って…!」
それは明らかに下心が丸出しのような女子生徒の声だった。

けれど暖は「うん、いいよ」と言い連絡先を交換し始める。
その子はありがとう、だけ言って少し照れた表情で友達のとこへ向かう。

「やった…交換できた嬉しい!」という彼女に対して良かったじゃんと皆ではしゃいでる姿はかわいらしい。
チカはもちろんのこと、女子はかわいい子が多いなと常々思う。

女の子らしくて男の子が守りたくなるような子。

そんな子に一度はなりたいものだが自分がしている姿を想像すると胸焼けがしてくる。

さっき暖はあっさりと承諾していた。暖もそういう女の子が好きだろうなぁ...と思う。
まだ私は連絡先を交換していないことを思い出すと、心がチクチク痛むのを感じる。

別に私から言ってないし仕方のないことだけれど。

もう少しで授業が始まるというのに暖のことを考えていると集中できない。
私はやめようと、ふぅーと深呼吸をしてから気を引き締めた。