先生は、いつもだるそうにしていて怒鳴ったりしたところはめったに見たことがない。
凛としている見た目とは裏腹にズボラな人だと思う。

そんなことを考えていると涼香(りょうか)先生が口を開く。

「今日は転校生を紹介するぞー」
先生の言葉にまたもや一気に周りが騒がしくなる。

「やっぱ転校生がくるって噂本当だったんだ」
「イケメンかな？」
「そもそも男か分かんないじゃん」

様々な声が飛び交う中私は1つの考えが頭をよぎる。

さっきの会話は"転校をする人"ではなく転校生がくるということだったのか。

まさかとは思うけど…さすがに違うよね。
不安と少しの期待が同時に襲う。

「はいはい静かに。転校生だってこんな中じゃでてきにくいだろ？」
と少しニヤついて言う彼女は本当に転校生のことを思ってるのだろうか。
面白がっているようにしか見えないが…。

「よーし、じゃあでてこいー」

クラスは静寂に包まれていて皆もそわそわとしていて期待の眼差しを向けているのが分かる。

ガラッとドアが開き、誰だ誰だと皆一斉に目を輝かせる。
そんな皆とは裏腹に私の心臓は縮み上がりそうで思わず目をぎゅっと瞑ってしまった。

転校生がはいってきた瞬間、それが誰なのか薄目でもすぐにわかってしまった。

色素の薄い瞳、桜が混じったような綺麗な髪色。
まさか、私の予想がこういう時だけ当たってしまうなんて。

はぁーと長いため息をつきそうになるのをなんとか抑える。

「は？！やばくないめっちゃかっこいいんんだけど」
「芸能人か何かかな？」
「…なにあの髪、外国人？」

イケメンと騒ぎ立てる女子達と、僻みが混じっている男子達の予想通りのクラスメイトの反応にため息をつきそうになる。

暖の髪色や瞳が気になるのだろう。好奇の目や軽視するような目で見ている声も聞こえてくる。

やっぱりこうなるのか。これだから嫌だったのだ、皆珍しいものが好きだ。暖はものなんかじゃないのに、品定めするかのように人を見る。

人間はそういうものだというのは分かっているけれど、それでも少し…クラスメイトに腹立たしさを感じていた。