* haru

彼女を見た瞬間に、すぐに分かった。

____ああ、この子は冷だ。
僕がずっとずっと昔から変わらない大好きな人。

けれど僕と出会った時彼女は小さな背中を丸めて涙を流していた。何が彼女をそうさせているのか分からなかった。

でも君の涙を早く止めてあげたいと思ったんだ。

「あの、大丈夫?」

急に声をかけられて目を丸くして驚いていた。
その表情からして冷はきっと僕のことを覚えていないのだろう。随分昔のことなのだから当たり前だ。

それでも良かった。冷が覚えていなくても冷ともう一度出会えたことが運命のようだったから。

きっと神様が最後に僕にくれた祝福だろう。

余命宣告をされて、僕はすぐに決めたのだ。
死ぬ前に必ず冷に会いにいくと。彼女を見つけだしてもう一度だけあの愛おしい笑顔を見たかった。

そう思った瞬間に僕はすぐに準備を始めて、親にも了承を得てわざわざ転校させてもらった。

まさかこんなに早く会えるとは思っていなかったけれど。

冷は慌てふためきながら「すみません、帰ります!」と言ってバタバタと走って行ってしまった。

もう彼女の表情は悲しみの詰まったものではなかった。多分、驚いて涙が引っ込んだだけだと思うけど。

少しほっとする。

どんな理由であれ彼女の辛さを少しでも紛らわせることができていたならそれだけで嬉しかった。