「話戻るけど、その夢っていつから見てるの?」

彼がその話題を自分からしてくれた事に少し驚く。
考えたこともなかった。そういえば、私がこの不思議な夢を見るようになったのは…そうだ。

_____暖と出会ってからだった。

暖とあの時、私が泣いていた時に話しかけてくれたあの日からだ。私が夢を見始めたのは。

点と点が繋がりそうなこの感覚、けれど…痛い。
頭が…痛くてたまらない。

「…おい、大丈夫か?」
何も言わずに頭を抑えている私を心配しているのが分かる。

「っ…大丈夫。私、何か大事なことを忘れてる気がするんだ」

私は暖と出会ってからこの夢を見始めたということを桐生くんに伝えた。

「…冷」
急に名前を呼ばれて驚いてしまう。

「名前、冷だったよな」
「うんそうだけど…」

桐生くんの脈絡のない言葉に子首をかしげてしまう。
「暖から何も聞いてないのか」
「…え?なんのこと」

桐生くんは苦しげな表情で血がでそうなほどに唇を強く噛み締めていた。

「俺からは…言えない。でも多分、あんたと暖は昔に会ったことがある」

その言葉を聞いた瞬間に驚くというよりかはやっぱり…と思ってしまった。

暖が出てくる夢や、幼い頃の私…そして暖と出会ってから見始めたということを気付いた時に、もしやとは心のどこかで分かっていた。

でもおかしいんだ。なぜ私がそんなことを忘れているのか。なぜお父さんはそれを教えてくれなかったのか。

けれどこれ以上は言えない、というように桐生くんはそれだけ言って口をつぐんでしまう。