ヒイロと出会って3日後。アマネは3年Ｄ組に来ていた。タオルと上着を返す為に。そこには、クラスの数人と話すヒイロの姿。どことなく、陽の雰囲気が感じられる。でも、その笑顔はピエロの様だった。《ヒイロ先輩は、無理をして笑っている》殆ど、直感だった。その痛々しい笑顔は、見ていて苦しくなる程だ。

アマネ「失礼します。1年Ａ組の雨宮アマネです。ヒイロ先輩居ますか?」
ヒイロ「はぁぃ。今行くね。ちょっと西条待ってて」
アマネ「ヒイロ先輩、タオルです」
ヒイロ「わざわざ、ありがとう。言ってくれれば、取りに行ったのに〜」
アマネ「御足労頂く訳にはいきません。ところで、西条先輩って1年Ａ組に弟さんいらっしゃいます?」
ヒイロ「ああ、ユウキくん？」
アマネ「そうです。」
ヒイロ「なんで？」
アマネ「いや、なんでもないです。お気になさらず」
ヒイロ「？」

　まさかユウキに兄がいたとは、大誤算だ。これ以上ヒイロ先輩に関わるわけにはいかない。しかし、ヒイロ先輩のあの痛々しい笑顔は、脳裏に焼き付いたまま。最後に《ヒイロ先輩、お互い無理せず頑張りましょ》と言い残して、この場を去った。