それからは、幸せな日々だった。悪口を言われても、平気なくらいに心が満たされていた。そんなアマネを見て悪口を言っていた娘は、内心穏やかでは居られない。その事にヒイロは、いち早く気づいていた。

 これなんだろう。手紙だ。

雨宮アマネさんへ

伝えたい事があるので、今日の放課後体育館裏へ来てください。

送り主の名前は、書いていない。とりあえずアマネは、行ってみる事にした。
 体育館裏へつくとそこには、女子トイレで悪口を言ってたクラスの娘がいた。悪い予感しか、しない。その子はリラという。ちょっとした金持ちの娘だ。幸いリラは、まだアマネに気づいていない。ヒイロに助けを求め、逃げよう。ヒイロに連絡した、ちょうどその時リラに見つかってしまった。

リラ「あら、来てくれたのね!嬉しいわ!」
アマネ「喜んでくれて、何より。」
リラ「ところで、ヒイロ君に助けを求めても無駄よ。」
アマネ「何故?」
リラ「ヒイロ君は、私の許婚だから。貴方なんて助けるはずがないわ。」
アマネ「そう。」
リラ「つまらない反応。もっと落胆すれば?」
アマネ「落胆?そんなの必要ない。私は、ヒイロを信じてる。」
リラ「それは、これを見ても言える?」

それは、ヒイロとリラがおでこをくっつけて笑い合う写真だった。

アマネ「…………。」
リラ「いい顔ねぇ。そうよ。私は、貴方のその顔が見たかったの。貴方は、私にないものを、いっぱい持っている。憎い。貴方が憎くくてしょうがないの。」

悲痛な叫びが響く。

アマネ「つまり、逆恨みね。醜いわ。こんな底辺なレベルの人とは居られない。もう話すことはないね。」
リラ「待ちなさい。」

リラはアマネの肩を掴んで、引き止める。アマネは体制を崩した。リラが掴みかかる。拳が振り上げられるその時。

ヒイロ「何してるんだ。アマネ大丈夫か?」
リラ「ヒイロ!?なんで、そんなのに声をかけるの?」
ヒイロ「僕が愛した人だからだよ。」
リラ「ふざけないで、貴方は私の許婚でしょ?」
ヒイロ「いつの話をしているんだ?その話は、2年前になくなった。恐らく、リラには、伝えられてない。」
リラ「そんな。」

リラは、走って立ち去る。相当ショックだったのだろう。

アマネ「ヒイロ。ありがとう。」
ヒイロ「どういたしまして。もしかして、この写真見たの?」
アマネ「うん。」
ヒイロ「これは、許婚が解消される前の写真でリラたっての希望で撮った写真だ。」
アマネ「でも、ヒイロ笑っている。」
ヒイロ「無理して笑っているのだよ。この写真撮るとき辛かったな。リラって口臭いから。」
アマネ「確かに。」
ヒイロ「さて、帰ろうか。立てる?気づいていないかも知れないけど、先生にも立ち会って貰ったから。」
アマネ「そうなの!?」
ヒイロ「多分、リラを追いかけて行った。」
アマネ「なるほどね。じゃあ帰ろう。」

その時ヒイロが立てないであろうアマネを、お姫様抱っこをした。気づいたら雨が降っていた。二人ともずぶ濡れだ。しかし、そこには溢れんばかりの笑顔があった。