帰り道の事だった。小さな交差点で車が猛スピードで走ってくる。私もその事には、気づいていた。しかし、足は歩むスピードをゆるめられない。本能で轢かれて死んでしまう事を望んでしまっていた。その瞬間、誰かに引き止められた。手を取り。抱きしめられる。もう、わけが分からない。しばらくの間、そうしていた。

ヒイロ「アマネ。死なないで。お願いだから。生きて。」
アマネ「ヒイロ先輩?死なせてくださいよ。私もう疲れちゃた。」
ヒイロ「疲れたなら、休めば良い。逃げたって良いんだよ。でも、死ぬのはダメだよ。悲しむ人がいるでしょ。」
アマネ「居ないですよ、そんな人。家族にはイジられ安心して生活出来ないし、クラスの娘たちの悪口でもう八方塞がりです…………。」
ヒイロ「ここにいるのにな。悲しむよ僕が一番。アマネの事が好きだから。」
アマネ「…………。いくら死にそうだからってそんな嘘つかなくてもいいですよ。先輩、気を使い過ぎです。先輩が無理をして笑っているのなんて私には、お見通しなんですからね。」
ヒイロ「僕の偽物の笑顔に気づいたのは、アマネが初めてだ。しかし嘘と言われるのは、辛いな。こんなにもドキドキして伝えたというのに。」

その時、繋いでいた手をヒイロの胸にあてた。ヒイロの鼓動は速く、緊張している事が窺える。

ヒイロ「これでも、嘘だって言える?」
アマネ「い……言えません。信じます。」
ヒイロ「良かった。恋人になってくれる。」
アマネ「いいんですか?」
ヒイロ「いいに決まってるよ。」 
アマネ「ヒイロ先輩好きです!宜しくお願いします。」

ヒイロが堪えきれず、アマネに抱きつく。その目には、涙が浮かんでいた。