私たちが出てきた際に通った鳥居、あれは神社の敷地内にあったのだろう。
どうやら境内の奥に位置する林を抜けたらしい。
果たしてユメビシが言っていた所と同じなのかは分からないが。
とりあえず元来た道を引き返す形で、露命は進んでいた。
その道の途中で、見覚えのある男と遭遇した。
それは半世紀ぶりの再会だったが、見た目に変化が見られなかった。
「おや、君達は……」
「あんたは確か、」
「ん? あぁ……いいんだ。そうか、コレの事だったのかなぁ。いやね、僕はただ異変を感じて様子を見に来ただけなんだ。今更君達をどうにかするつもりもないよ」
「キクゴロウさんはご健在なのか?」
「もういないよ。キクはね、最期まで君達二人の行方を秘密にしていたんだ。律儀な男だよね? ……だから僕も深くは追求しない」
「そうだったのか……」
「キクに代わって、せめてもの手向けだ。この先に神域とされる清い空間がある。そこでゆっくり過ごすといい。大丈夫、僕が許可しよう」
「いいのか?」
「いいよ。ただしどんな結末を辿るかは、分かりかねるけどね」
「それでも有難い」
「そう? ならよかったよ」
「……もう一つ頼まれて欲しい。もし、ユメビシと名乗る少年が此処を訪れたら、礼を伝えてくれないか」
「え、ユメビシ?」
「なんだ知り合いか? 神社に用事があるらしい。ここかは分からないんだが……」
「彼が、ねぇ……うんうん、興味深いな。そっちも任せなさい」
「あぁ、頼んだ」
二人の会話をどこか遠くで聞いている感覚だった。
私はすっかり露命に身を預けているものの、意識を手放さないように踏ん張るだけで精一杯で、月越しに露命のお面を眺めていた。
かつて居鶴と祭りへ出かけた際に、お土産として手渡したものだ。
それからずっと律儀に身につけている。
なんとか手を伸ばしてそれに触れてみた。
走ったせいで緩んでいたのか、後ろの紐が解けて面は外れてしまった。