……外の世界は様変わりしていた。
空気が澄んでいて、涼しい夜。
冷たい風が容赦なく体を通り抜けていき、足がすくむ。
知らない景色、透き通った肌、こうして外に出てしまった選択。
多くの不安と迷いを抱えながら、今ここに立っている理由……それは、過去の後悔を回収するため。
――何処にいるんだろう? 近くに気配を感じる。
貴方も私の一つなのに、辛いものを一人背負わせてしまって、本当にごめんなさい。
身勝手なのはわかってる。
それでも、戻ってきて……一緒に過ごそう。
苦しい気持ちも、憎い気持ちも、全部が私の大切な感情だった。
もう一人じゃない。一人にさせないよ、と貴方にも伝えたい。
私にそう言って、傍にいてくれた人がいたように。
あの場所を後にして、気配のする方角を突き進む。
いくつかの鳥居を通り過ぎて広い通りに出た先で、人影は待ち伏せていた。
こうして私達は再会した。
しかし想像していたものとは異なる形をしていた。
私が懺悔の気持ちから会いに行ったのとは対照的に、彼女はただひたすらに復讐の鬼と化し私を探していた。
その執念から実態のない私から弾き出された曖昧な存在は、どういうわけか肉体を得て、別の生き物に変貌を遂げていた。
外見は私に似ているが、私本人であるはずない。
――だって身体はとうの昔に朽ちている。
ならあの肉体は一体誰のものだった?
言葉を交わしたわけではない。
でもお互い対峙した瞬間、もう元通りにはならないと察した。
初めから相手は私を始末する為に、殺意を込めた眼差しで鈍器を掲げて襲いかかる。
恨みや怒りの原動力は凄まじいものだ。
力の差は歴然だろう。
でも私は何があっても、彼女を受け入れるために来たんだ。
逃げも隠れも、するつもりは毛頭ない。
ただ一緒についてきてくれた露命だけは、絶対傷つけさせない。
私を庇おうとした彼を手で制して、彼女の攻撃を受け入れた。