その後も昔の日本人のエロスを延々と語っていた和希だったが、朱里のスマホの通知音を聞いて熱が冷め、一気に黙り込んだ。朱里は自身のスマホを厳しい表情で睨む彼に、疑問をぶつけることにした。

「和希? やっぱり今日の和希は変よ。わたしが帰ってきても返事しないし、しかも裸エプロンで料理してるし、急に鬼気迫った顔で部屋に入ってくるし」

和希は唇を噛み、自身のスマホにある背の高い人物に朱里が笑顔を振り舞いている写真を見せた。

「朱里、あのさ……この人誰なの? 他に好きな人ができたの?」

それを見た彼女はいきなり慌て始め、両手を目の前で振る。和希の眉間の皺がさらに増えた。

「えっ……和希、今日あの辺りにいたの?! 声掛けてくれても良かったのに! それに好きな人って? わたし、友達に会ってただけよ?」

(あれ、思ってた反応と違う)

和希は青ざめるどころか顔を真っ赤にしている朱里を見て、ますます訳が分からなくなった。

「あのね、和希。この人は女性よ? まあ確かに彼女は背も高いしスタイルもいいから男性に間違われることもあるけど!」

ぽかんと口を開けた和希を見て、朱里はスマホを操作し、和希に向けてあの人物とのツーショットを見せてくれた。それも複数枚あり、朱里の許可を貰って和希はカメラロールをチェックしていく。彼女と楽しそうに笑顔を振り舞いている朱里が何だか眩しく見えた。

「じゃあ……朱里は友達に会ってただけだったのか……」

和希はへなへなと床に座り込んだ。自分が早とちりした瞬間にもし戻れるなら、あの頃の自分をぶん殴りたい。

「でも和希がBLに理解があったなら、もっと早く言っておけば良かった……ごめん、和希……心配かけたね」

朱里は和希の頭をぽんぽんと撫でる。その手が背中に添えられ、ゆるゆると彼の背中を擦ると、和希に抱きしめられた。少し高めの体温が心地よい。

(浮気ではなかったみたいだけど……ひょっとして朱里の不審な行動ってもしかして……)

やがて和希は朱里を離し、しっかりと彼女と目を合わす。

「もしや行き先を言わなかったのは、趣味の話もしないといけなかったから?」

朱里は顔を赤くして頷いた。