今日の朝ごはんは凛ちゃんが作ってくれた。
2人で食べながら雑談した。
公園で見かけた犬の事。老後の事。今度の日曜日の事。
どれも凛ちゃんが隣にいてくれればそれでいい。
こうやってありきたりな話をして、くだらない冗談を言う。
凛ちゃんと2人で暮らすようになってからの習慣だ。

「行ってます」
「いってらっしゃい」

ドアを開けて外に出る。
2人の家に背を向ける。
そして心の中で凛ちゃんを思い出し微笑む。
しばらく歩いて駅に行き、満員電車に5分ほど揺られ仕事場に着く。

「高倉くん、おはよう」
「おはようございます」

自分のデスクに座りパソコンを開く。
凛ちゃん、元気かな。
この前暑さで倒れた凛ちゃんに日傘をプレゼントした。凛ちゃんはとても喜んでくれた。
気づいたら緩んでる口元を抑え、仕事に集中しようとする。

「高倉くん、何でニヤニヤしてるんですか?」

隣の席の松本さんに言われて、まだ笑ってしまっている事に気づく。

「恋人が可愛くて。ははは、すみません」
「そうですか。そんなに愛されて彼女さんが羨ましいです」

松本さんも笑ってくれた。
家に帰ったら凛ちゃんに話そう。
仕事中にずっと凛ちゃんの事考えてニヤニヤしてたんだって。
きっと言われるだろう。

「いつもの事でしょ」って。
優しい目をして笑ってくれるはずだ。