美人でスタイル抜群だけどマジ怖いギャルが放課後に話しかけてきた。
「真夜中に廃工場へ来て。海沿いの倉庫前で待っているから」
 クラスのすみっこで生き抜いている僕はギャルと話したことがない。怖くてチビったけど、ちょっと興奮した。これは愛の告白に違いないと確信したからだ。オタクに優しいギャルは実在したのだ!
 夜に家を抜け出し廃工場へ行った。待ち合わせ場所の倉庫前に立つ。小さな波止場があって、波の音が聞こえた。ギャルの姿は見えない。僕は彼女の名前を呼ぼうとした。そのときだった。倉庫のシャッターがガラガラ鳴って上がる。中から眩しいライトが幾つも僕を照らした。エンジンの爆音が鳴り響く。何台ものバイクが倉庫から出てきた。僕の回りをバイクの集団がグルグル周回する。僕は叫んだ。
「ななな、なんなんだ!」
 バイクの群れが停まった。倉庫の中からギャルが出てきた。
「うわ、キモいオタク、まんまと騙されて来ちゃったよ。あ~賭けに負けた!」
 バイクに乗っている不良の団体が笑った。
「来るって言ったろ! オタクはギャルの誘いを断れないんだよ!」
 僕は再び叫んだ。
「ななな、なんなんだ!」
 ギャルは不良どもに言った。
「わーったよ! ラーメンライスを全員に奢る!」
 それから僕に言った。
「おい、有り金全部出せ」
「え?」
「賭けに負けたから、こいつら全員に飯を奢らなきゃならないんだよ! 金を全部出せ!」
「え!」
 お金を持って来ていなかったので、僕は正直にそう言った。ギャルが激怒する。
「金を持って来ない奴があるか! カツアゲできねーだろ!」
 不良たちは笑った。
「どうするコイツ? 金がないんなら、痛めつけて遊ぼうぜ!」
 不良たちはバイクから降りて僕を囲んだ。素手だけでは物足りないようで、釘バットとか木刀とかナイフとかチェーンとかの物騒な獲物を手にしている。
「叩きのめしてやるぜ! 覚悟しな!」
 不良たちが僕に襲い掛かった次の瞬間、僕の中で何かが目覚めた。体が勝手に動き、不良たちを瞬時に叩きのめした。不良たち全員がアスファルトの上で伸びているのを見て、ギャルは腰を抜かした。僕が彼女に近づくと、いきなり土下座した。
「ごめんなさい、許して! ちょっとからかうだけで、悪気は全然なかったの! お願い、何でもするから!」
 その日からギャルはオタクの僕に従順な女に生まれ変わった。