「ATK値が90,000越ぇぇッ!? グリムの兄貴、貴方やっぱりモンスターだったんですね!?」

 グリムのステータス値を見て驚いたアーサーが再びグリムに喧嘩を売った。本人は勿論無自覚な発言であったと同時、もうアーサーのリアクションにいちいち突っ込むのも面倒になったグリムは、サラッと受け流した。

「これならフロア90でも通用するかもな。マリアはどうだ?」
「私も大分上がってるわ。やっぱSランクアーティファクトの効果は絶大ね」


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マリア・シスター

【スキル】ヒーラー(A):Lv99(MAX)
・回復術(ランク:極)
・付与術(対象の能力値を+30%上昇させる/上限人数5)
・スキルP:17,000

【サブスキル】
・癒しの祈り(回復率が上昇する)
・付与の領域(付与術の上限人数+2)
・戦闘鼓舞(自らが戦えば戦う程に全能力値アップ)

【アーティファクト】
・スロット1:『イザナギの薙刀(S): Lv2 ※ヒーラー専用』
・スロット2:『イザナギの国雲(S):Lv1 ※ヒーラー専用』
・スロット3:『イザナミの着物(S):Lv1 ※ヒーラー専用』
・スロット4:『イザナミの神飾り(S):Lv1 ※ヒーラー専用』
・スロット5:『イザナギの火神(S):Lv1 ※ヒーラー専用』

【能力値】
・ATK:29,000『+20000』
・DEF:31,000『+20000』
・SPD:32,000『+20000』
・MP:55,555『+46000』

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「お前MP10万超えてるじゃねぇか」
「そうみたいね。これなら皆をもっと助けられるわ」

 アーサーの召喚士スキルの真髄が遺憾なく発揮され、場はこれまでにない高揚と期待の空気に包まれていた。たった1人を除いて。

「私のアーティファクトが1つもありませんが――」

 場の空気を一刀両断したのは、他でもないシェリル・ローライン。彼女は普段から冷静でクールな表情であるが、今の彼女は明らかに仏頂面&強い失望を込めているであろう瞳をアーサーに向けていた。

「そう言われれば確かにシェリルのがないね。アーサー様さぁ、幾らシェリルの気を引きたいからって意地悪は良くないっしょ☆」
「また馬鹿な事をいうなモルナ……! そんな訳ないだろ。Sランク召喚は完全にランダムなんだよ!」

 モルナを冷やかしを何とか誤魔化すアーサー。だがそんなアーサーとモルナのいつものやり取りの横でも、シェリルは微塵も表情が変わらない。視線だけで全てをアーサーに訴え掛けていると言わんばかりだ。

「……」
「いや、シェリル。そんな目を向けられてもさ……。召喚をずっと見てただろ? 僕でもコントロール出来ないんだよ、このSランクアーティファクトは」
「……」
「いやだからその無言の圧力止めてくれよ……」
「……」
(う~ん、困った。こんな状況にも関わらず、油断するとシェリルの綺麗さに見惚れてしまう僕は愚か者なのだろうか――)
「……」

 アーサーが独りそんな事を思っているとは知らないシェリルは、変わらず冷たい失望の視線をアーサーに向けていた。

「ようやくここまで来たかい。遅かったねぇ――」
「イヴさん……ッ!」

 突如そこへ現れたのはイヴ。その声に皆が一斉に反応して振り向いた。更に。

「あれ、バアさんじゃねぇか。おー、ジャックも。丁度いい所に来たな!」
「よっ。皆揃ってんね」
「一応僕もいますよ」
「ジャックさんにベクターさんも。わぁ……再び精霊の宴会がお揃いだ」

 イヴと一緒に現れたのはジャック。そしてベクター。ジャック達は慣れた雰囲気で言葉を交わしていると、そのすぐ隣でアーサーがジャック達『精霊の宴会』の集合に自然と心が高ぶっていた。

「いつまでも憧れてんじゃないよアーサー。アンタはもうコイツらと“同じ土俵”にいるんだからねぇ」
「い、いやいやッ! 僕なんて全然同じじゃないですから! 恐れ多いですよ!」
「アンタも相変わらずだねぇ。成長が見られないよ。シャキッとしな! アンタ達にこの世界の運命が懸かっているんだからねぇ」

 イヴの何気ない一言が、不意にアーサーを緊張させた。

(そうだ……こうしている間にも、魔王の復活は確実に近付いているんだった。未だにどこか実感ないけど、それだけは絶対に阻止しなくちゃいけない――)

 無意識にグッと拳を握るアーサー。そしてそんなアーサーの様子を横目で見ていたジャックが、彼に話し掛けた。

「強くなってるみたいだね、アーサーちゃん」
「ジャックさん……! いえ、僕なんて何もしてないです。ここまで来れたのもグリムさん達のお陰ですし」
「ハハハ。そんな謙遜ばっかしなくてもいいって。アーサーちゃんだって確かな実力があるでしょ。いくら俺らの助けがあったからって、それだけじゃ絶対にここまで来れないよ」

 優しく力強い言葉。アーサーはクシャっと笑いながら言ったジャックの言葉に、心の奥底から嬉しさと温かさが込み上げていた。

「ありがとうございます! ジャックさんみたいになれるよう、僕ももっと強くなります! 魔王を復活させない為にも」
「いいね、その感じだよアーサーちゃん」
「そうだジャック! 見てみろコレをよ!」

 アーサーとジャックの間に割って入ったグリムは、自慢げな様子でジャックにSランクアーティファクトを見せつけた。

「それは……」
「ああ。Sランクアーティファクトだ。しかも俺専用のな」

 自分達が命懸けで入手した1つのSランクアーティファクトとはまた違う、別のSランクアーティファクト。それを見たジャックは一瞬驚いたように目を見開くと同時に、フッと静かな笑みを零した。

「ね。やっぱ凄いじゃんアーサーちゃんは」
「そうなんだよ。この野郎、最初見た時はベクターみたいにパッとしなくて心配だったんだけどよ、とんでもねぇスキル持ちだぜこりゃ」
「君は本当に失礼で不快な存在ですね」

 突然の流れ弾を食らったのはベクター。しかし、これも精霊の宴会では日常のやり取り。犬猿の仲とでも言うべきだろうか、最早誰も何も言う事はない。

「ジャックさん、一応コレがジャックさんのSランクアーティファクトなんですけど」
「え、俺のもあるの?」
「ああ。なんかアーサーのランクアップ召喚とやらがランダムでな、Sランクアーティファクトにしてみないと何が出て来るのか分からねぇらしい。それでとりあえず持ってるAランクアーティファクトを全部Sランクに変えた結果がこれって訳だ。
お前用のやつも出てラッキーだったな。まぁ俺は全スロットSランクで埋まってるけど!」

 グリムがジャックに再び自慢する横で、アーサーはジャック用のSランクアーティファクトを彼に渡した。
 受け取ったジャックは「ありがとアーサーちゃん」と言いながら早速Sランクアーティファクトを装備すると、ウォッチでステータス確認をした。


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ジャックヴァン・ジョー・チックタック

【スキル】精霊使い(A):Lv99(MAX)
・火の精霊(サラマンダー:火系スキル使用時、全能力値+50%)
・水の精霊(ウンディーネ:水系スキル使用時、全能力値+50%)
・風の精霊(シルフ:風系スキル使用時、全能力値+50%)
・地の精霊(ノーム:地系スキル使用時、全能力値+50%)
・スキルP:3,333,333

【サブスキル】
・四大精霊の加護(全能力値+20%)
・精霊に愛されし者(全能力値+10%)

【アーティファクト】
・スロット1:『子丑の神使(S):Lv1 ※精霊使い専用』
・スロット2:『寅卯の神使(S):Lv1 ※精霊使い専用』
・スロット3:空き
・スロット4:『未申の神使(S):Lv1 ※精霊使い専用』
・スロット5:『酉戌亥の神使(S):Lv1 ※精霊使い専用』

【能力値】
・ATK:59,000『+30000』
・DEF:56,000『+30000』
・SPD:57,000『+30000』
・MP:58,000『+30000』

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 ジャックのステータスを横で覗き見たアーサーは人生一の驚愕。

「本物の化け物キターーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?!?」